昨日の続きです。(私の各部分は黒い字の部分で、先生の文章のサマリーは紫の文字で記された部分ですが、先生の文章の私なりの要約であり、そのものでは有りません。)
3・HPVワクチンを摂取する機会を逸することによる損失について
HPVワクチンの有効性と安全性は既に確立されているにもかかわらず、2013年の厚労省による積極的勧奨の差し控え以降接種率は1%未満に低下。日本産婦人科学会、日本小児科学会などの国内17の関連学会からの接種推進の提言のみならず、WHOは「積極的勧奨の差し控え」という根拠に乏しい厚労省の決定を名指しで批判しています。それでも接種率が低迷しているのは情報提供がなされないことによる国民側のリスク評価が出来ないことによるものです。そのせいで、本人のみならずその家族も将来的に大きな負担を負わされ、なくさなく済んだ命を失うことになるわけです。積極的勧奨が中止される以前は70%程度であって接種率が2013~2019年には1%未満へ低下しており、それによる子宮頸がん罹患者は24,600-27,300人、死者は5,000-5,700になるであろうという推計があります。
国民側が判断できないというのは無理もないことで、推奨している他の国々の情報はその他の国の言語、もしくは多くの科学的説明文は英語で書かれた論文等ですので、標準的な過程の標準的な家庭のお母さんやお父さんがワクチン接種による安全性の確認やその効果について白黒混ざった情報の中から自分の子供達に「賭け」でワクチン接種をさせないようにと考える人がいても特段不思議では有りません。
特に日本人のように親方日の丸の行っていることには右へ倣えで従う性質を持つ国民はお上が「ヨシ」というシグナルを出すまではなかなか動かないもの、そういう意味では国の責任は重大です。(少なくとも2020/9月にわかり易いリーフレットを作成するまでは!)
4・新しいリーフレットの送付及び厚労省からの通知について
2014年に厚労省はHPVワクチンに関する情報提供用のリーフレットを作成しHP上に公開しましたが、その後の調査で対象年齢女子の82.5%、同年齢女子を持つ母親の87.7%がリーフレットを見たことがないと回答。そのため、2020/9月にわかりやすいものへと作成し直し、接種対象者とその保護者に個別送付を行うことを決定しました。その翌月には厚労省は全国の都道府県宛に「対象者が情報に接する機会を確保し、接種をするかどうかについて検討・判断出来るよう、リーフレットなどを個別に送付する」旨の通知が発出されました。この通知に従って既に全国では情報提供がなされていますが、少なくとも名古屋市ではこの4月末時点でそれが行われておらず、中央省庁からの通達を無視してリーフレットの個別送付を行っていないのは全国20の政令指定都市の中で横浜市と名古屋市のみ。愛知県内の自治体では江南市と名古屋市のみです。
実際に私も病院で、その様な年齢のお嬢さんを持つお母さんから相談を受けることがありますが、淡々と科学的根拠に基づいたワクチンの話をすると「えーっ、ワクチン打つと酷いことになると思ってた」とか、「名古屋市からお知らせが来るまで待ってれば良いよねって思ってました」などという返事が殆ど。真実など殆ど何も伝わらないような仕組みになっているようです。医療従事者である親にしてこの程度なのですから、一般の方に置いては想像するだに恐るべきレベルの理解だと思って間違いないと思われます。
さて、以下からがいよいよ我らの住む名古屋市の現況に関する江口先生の更なる記述です。
5・名古屋市の状況
i)名古屋スタディーについて
河村市長は以前より約がい問題に熱心で、HPVワクチンに関しても同様。全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会愛知支部の要請を受け、河村市長経由で2015年に名市大の鈴木先生に頼んで行われたものです。(昨日もリンクを付けておきましたが、再度ここに貼っておきます。)7万人を対象に行い3万人から回答を得ましたが、結果はシロで、結論は極めて明快に「24の症状のいずれもがその原因をHPVワクチンに求めるのは無理がある」というものでした。(詳しくは上記リンクでの先生へのインタビューをお読みください。)
これに対して河村市長は「びっくりしましたよ、本当に。まず驚きましたね。(中略)なんでかというと、エイズやサリドマイドで、そちら側の話を今までずっと国会の中でやってきましたので、薬害という方でね。」とのべています。同日に市役所で会見を開いたHPV薬害訴訟全国弁護団代表・薬害オンブズパースン会議理事長の水口真寿美弁護士は「明らかに不自然な結果で被害実態を捉える解析もなされていない」と批判、更には「速報の解析結果の結論の信頼性は乏しい」と意見書を名古屋市に送付。
そして、これ以降1月を目処としていた名古屋市の最終報告は遂に発表されること無くよく2016年の6月18日にこの調査に関する一切の記述が市のHPから削除されました。
一方、研究結果はPpillomavirus Researchに掲載され、世界的にも高く評価されています。
まあ、ここまで読んでこられた方は既に話の筋は見えてきたと思いますが、要するに名古屋市は名古屋市民の税金を使ってこのスタディーを行っておきながら、オノレがまずいと思った調査結果は市民の目の前からは消して「無かったこと」にするというあいちトリエンナーレ方式の手管を用いてもみ消しという、公人として最もやってはいけないことをやらかしております。
さてここまで書きましたが、やはり一気に書くのも読むのも疲れると思うので、江口先生の記述の残りの部分も明日以降も更に分割して書いていこうと思います。(いつの日にか接種に迷った人がサーチエンジンで個々に辿り着いて接種してくれれば良いなと思って、無能を承知で書き続けます。)