定年延長が普通になってきて65歳でも条件を変えながら普通に働くような人が増えてきました。
ところが、定年がこれくらいの歳になってくると実は割合は低いものの若年性認知症が発生してくる人で仕事を続けることになる事が当然あるわけです。若年性認知症の定義は「若年性認知症 18歳以上、65歳未満で発症する認知症の総称。65歳以上で発症する老人性認知症と同様に、脳血管障害やアルツハイマー病などによってもの忘れ、言語障害などの症状が現れる」というもので、生きている限り誰にでもそういう状況に陥ることが有るわけですね。勿論、誰にでも有るという意味では、こう言うことを書いている私だってそのリスクが無いわけでは無いのです。
実際のところまだ仕事盛り世代で認知症になってしまった場合、それが家族の大黒柱であった場合、家計を支える人間が居なくなる上にそのお世話をしなければならないので、その負担は家族にとって想像を絶するものになるのは容易に想像できると思います。
しかし、認知症の問題はもう一つあって、普通に70代後半くらいになったご夫婦が共に認知能力が落ちてきてギリギリのレベルの生活から遂にそれが支えきれなくなって施設に入るまでの期間どうやってその二人の生活をサポートするのかという問題が日本中に有るわけです。
実際に私が訪問診療で見ているご夫婦は共に80代。10年ほど前から次第に奥様に認知機能の低下が発生してきて診療が始まったのですが、共にマンションで暮らしていくうちに、なんと今度はお父さんのほうが急速に認知機能障害が発生してお母さんの認知機能低下を追い越してしまう始末。
本当にどうやってこのお二人は日常を支え合っているんだろうと当方が同行の看護師さんと訝るほどの認知機能の低下があるのですが、取りあえずは奥さんの料理と洗濯の力で生活を乗り切っていました。しかし、その状況を既に知っている遠隔地に住む息子さんにお話をして包括ケアマネじゃと共にこのご夫婦の施設への転出を決めました。
決定的だったのは薬の管理が全く出来ずに成人病の治療が全くできないこと。そしてエマージェンシーの対応が全くできなくなっていたこと。例えば「台所でもしボヤがあったらどこに連絡をしますか?」「どちらかがもし倒れたりしたらどこに連絡しますか?」と言っても反応できず、「消防車を呼ぶ番号は何番ですか?」といっても思い出せず、「物を盗られたりした時にはどこにお電話をしますか?」等の質問も答えることが出来なくなってしまったというのが決定打でした。
今、こうやって他人事のように書きましたがそういう事態は「誰にでも」来る可能性があることは今の時代普通です。
私の両親も九州の実家で何とかかんとかやっておりますが、時々看護師の姪っ子が見に行ってくれたり母の妹が北九州から遊びがてら訪問してくれるようで、その客観的な報告に一喜一憂しております。
己も頭と体を使ってなるべく長い間、配偶者や家族に迷惑をかけない人生を送りたいものです。
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