今日、ある病棟に用事があって訪れた時、入院している患者さんのネーム一覧に消息自体を忘れていた患者さんの名前を見つけたのでした。少なくともこの方の初期の内科入院受付から受け持ち、数年前に施設への移動も補助し、そこから当院の外来への通院中は「それなりに」大人しく通院していましたが、一年ほどした後で施設を出たという所までは伺っていました。
私自身はこの人の来し方というかいろいろと複雑な背景を知っていたので、内心は施設で大人しいと伺った時も「猫被ってる」ということを理解していたつもりで外来では(この患者さんがどういう人かという事を理解している事をお互いに暗黙の了解のうちに理解しているつもりで)対応していました。外来で会うとニヤッという感じでしょうか。脇で施設の女性が彼の事に関してわーわーあれこれ言うんですが、私もその患者さんもニヤニヤしてハイハイという感じ。w
この方、最初に社会的理由で入院されていた時に、胃もたれするというので胃カメラのスクリーニングをしたところ、少し変わったタイプの白血病の発症が確認されたため、血液内科の先生に紹介状を出してそれが完治した時には紹介状を出した私までも大変に感謝されたものです。(実際に感謝されるべきは治療して下さった血液内科の先生!)
しかし、最初に書いたような経緯でたまたま再会したこの患者さんに挨拶をしようと訪れたところ、ベッドの上でまさに口を大きく開け眼球を上転させ、呼びかけにも応じず…。とても空しい気持ちになりました。
入院した当初は、大柄で周りを威圧するような炯炯とした眼光で、言葉の端々に昔、その筋の人間であったことを偲ばせるような名残りを響かせる人でしたが、今は筋肉どころか肉自体が削げ落ち本当に骨と皮の様に…。
力を以て世の中を渡り歩いた彼も筋力の消失と共に見るも無残な様になってしまったのをみるのは、驕る平家も久しからず…という歴史的台詞を眼の前に寝て動かなくなっている彼を通して思い浮かべざるを得ませんでした。
そもそも、なぜここに再び彼が入院しているのだろうと思い師長さんに尋ねたところ、実は各移動先の施設や病院でいろいろと問題を起こし、警察沙汰になる事も二回。そのうちあちこちで出禁になると共に最後は体調を崩してある組織で発癌しているのが見つかり今回の経緯と相成った様です。
どんな人生を送るかは人の勝手ですが、出来るなら人に喜ばれることをして少しは役に立って死んでいきたいものだなと思うのでした。
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