ビタミンB1の長期的欠乏から生じる疾病には多くのものがありますが、昔はその代表が脚気とよばれていました。
この病気は白米を食べ始めた江戸の昔より、ものすごい数の日本人や軍人達の命を奪い続けたのですが、もっと早く治療できたはずのこの病気、明治の当時は東大の大先生達が非ドイツ学派の高木兼寛や鈴木梅太郎を無視したため、日本に不必要に異様な長さにわたって大惨禍をもたらし続けた人災でもあったのです。
翻って現代。その原因が判明した後、暫くはこの疾患は消失していくかのように思われていたのですが、実は若者などのカップラーメンなどの偏食やホームレスの栄養不足、そしてアルコールの長期過飲者などを中心として「いつまでも」日本にその姿を残し続けることになっています。
まあ、多くの場合はウェルニッケ(脳症)・コルサコフ症候群とか末梢神経障害などという病名で診断を受けていますが、その他にもビタミンB1欠乏性末梢神経障害とか。
入院してきた患者さん達の個人生活史の聞き取りを行うと「そりゃビタミン不足、栄養不足にもなるわな・・・。」という感じの溜息をつきたくなるような本当に酷い食生活や飲酒生活を送っている人達が驚くほどたくさんいるのです。
豊かだと思っている日本のあちこちで実は今日のご飯が食べられな人達なんて言うのはゴマンと居るわけですがそれに加えてアルコール依存や偏食の結果「死」に至る人達もまだ沢山いるのです。ビタミン不足は大人似関しては自分の選択の結果である場合もかなり多く有るわけですが、残念ながら子供達の中にもそういった子達は居るわけで、私としては誠にやりきれません。
「子ども食堂」がこれに対する本質的な解決策であってはならないと強く思うのですが、弥縫策としては喫緊の課題を解決する方法としては仕方がないのかもしれません。
しかし、一度これらのビタミンB1などの長期的不足から神経障害を発症した患者さんは本当に治りが悪い。疾患発症の初期状態の人であってもかなり治療に難儀する上に本人の服薬治療・栄養指導・運動リハビリなどへの真剣な参加が得られない場合や高齢者の場合はまずかなりの場合神経症状や麻痺・拘縮などが日常生活の動作レベルを下げるものとして残ってしまいます。
若い頃からのキチンとした食生活にたいする教育は多くの医療費を浮かせ得るのでしょうが、事はそう簡単ではないというのを現場の患者さん達の姿が教えてくれる日々なのでした。
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