2020年3月3日火曜日

男やもめ・老後の一人暮らし

未婚・離別・死別その他もろもろの理由から老後に一人暮らしになってしまう人たち。

在宅医療のバイトをしているとそのような名古屋の老人達の日常を垣間見ることができます。家族の中にそんな人がいるという人でもわざわざその人達に親戚として会いに来るというようなことをしない人達も沢山います。

実際の所、多くの一人暮らしの男性たちは高血圧、心疾患、腎疾患、脳卒中による麻痺、高脂血症、皮膚疾患など何らかの基礎疾患を持っている人が多く、いろいろな介護サービスを受けている人たちが大勢います。典型的なのは若いころに田舎から名古屋へ仕事を求めてやってきて、工場や店で淡々と働いて結婚や内縁の妻を持った後に別れを経験、そのまま一人暮らしを続け出鱈目な食生活などとを続けるうちに体を壊し、加齢とともにしぼむ様に今に至ってしまったという人々。

しかし、今日行ったオジサンの家で小さな変化が見られました!

そのオジサンの生活の基本は一日二食、昼と夕食。朝はまずなにも摂らずに昼に起きてきて夕方には二合の焼酎を飲んで夜には寝るという暮らし。脳梗塞後の後遺症で左片麻痺があるのですが、知的な能力は比較的保たれていて訪問看護師さんの言う事はあまり聞かないのですが、私の言う事はよく聞いてくれます。

今回で四回目の訪問だったのですが、三回目までの訪問でオジサンの基礎的疾患のデータ等を取り終えたうえでかなり親密にお話をすることができました。その上で私からオジサンに提案したのは「生活習慣と生活環境の改善」でした。
長年にわたる不摂生で種々の病に苦しんでいるわけですが、床の上には煮締めたような小さなカーペットが敷いてあり、机の上には一体いつ洗ったんだろうというようなカピカピになった茶碗類が並べてあります。そしてその小さなテーブルの下にはお決まりのように封の切られた酒類が数本。

まず私が言ったのは「このカーペット、洗濯するか捨てるかしましょう!ダニの発生源です。」というものでした。するとどうでしょう、二週間後にあたる今日四回目の診療に行ってみたところ、部屋の中がびっくりするほど奇麗になっていたのです。

ご本人に聞いたところでは、ヘルパーさんは飯を作ってくれる時間でいっぱいいっぱいで、それ以上のサービスを介護行政の割り当てポイントでするような余裕は無し。また、訪問看護師さんもそんなクリーニングをする事はまずありません。

「片づけるのに三時間以上かかったよ!」と、笑いながら教えてくれましたが私は嬉しくて嬉しくて・・・。この工場地帯に住むような夢や希望を失った老後の男は多くの場合自暴自棄を絵に描いたような生活を送ることが多いのです。

そんな中でそんな「負の流れに対抗する」ような行動を見せてくれたきっかけが私の様な男の囁いた一言であったのなら望外の喜びと言うべきでしょう。これからも、押しつけがましくない感じで時間をかけて少しづつ少しづつオジサンと一緒に生活のベクトルを良い方向に変えていけたら良いのですが。


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