2020年3月5日木曜日

家族に捨てられた精神科の患者さん

このブログを読むことのある多くの方々にとって精神科の病棟内の世界というのは殆ど縁のない世界かと思われます。

しかし、この病院に来て良くわかったのは若年の方から老人まで、精神科の病棟では年齢に関係なく家族親類などから完全に縁を絶たれ捨てられた患者さんの割合が高いことです。

重度の障害のために全く話がかみ合わない患者さんが人生の初期の段階で親元から離されたり捨てられたり、親族からも捨てられたり。人生の一時期結婚した後、配偶者に捨てられたり子供から絶縁されたり・・・。それこそ悲劇としか言えないような経験をされている方が多いのです。

目に見えない病の目に見えない原因に一生を台無しにされたまま、自分の置かれた状況も理解できないまま病棟の中で一生を終えてしまうような状態にある方々も少なくありません。出すことが出来ればと私が思うようなことも時々あるのですが、既に入院が20年、30年となり外の世界に自分の身を置ける場所や知人が全くいなくて自ら「出るのが嫌だ」という人も。

自分の血を分けた子供さん達とも精神疾患が原因なのかかなりシリアスな大ゲンカや仲違いで絶縁されている人も多く、治療が奏功してもう落ち着いていると思われるような患者さんでも、戻っていく術も戻っていく場所もないということが本当に多い。残念です。

近代の精神科医療では解放と病院外での日常生活への再度の融合を頑張ってはいるものの、現実の世界の壁は思っている以上に高くなかなか上手くいかないことも多いのです。
色々なレベルのいろいろな職種の方々の努力で、そういった患者さんがなるべく普通の形で再び普通に日常を送れるようになることが出来れば素晴らしいのですが・・・。

難しいことですが、病気の治癒と並行して社会システムへの融合法の進化も必要。知恵と時間をかけるしかありません。


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