大変残念なことですが、精神科の「依存症病棟」という部門から最近次から次へと患者さんが内科へやってきます。
しかも、その患者さんの多くがアルコール依存症の末に辿り着いた「非代償性肝硬変」という状態です。日本人の肝硬変の多くはB型・C型肝炎ウイルスによるものなのですが、肝臓をアルコールによる波状攻撃で連日のように洗い続けた末に辿り着くのがアルコール性肝硬変。
肝臓というのはもともとが素晴らしい回復力を持つ沈黙の大工場ですから、通常はちょっとやそっとのことでは音を上げませんし、持ち主の無理な飲酒でも黙って耐え続け、相当のレベルまでは「肝硬変の症状」が出てくるようなことはありません。
しかし、それでも血液学的にはある程度の確率でγ-GTPが上昇してきたり、赤血球が大球性になってきたり、アミラーゼの値が上昇してきたりと思えてに出ないところでは生体側の反応としていろいろな数字が踊り始めます。実際に肝臓全体の種々の酵素が上昇してきたとしても、飲酒を止めればかなりの速度でこれらの数字も正常値に戻ってくるのですが、それも繰り返されれば炎症の発生と消退のパターンと一緒で組織の線維化と言うことが起こり、正常組織の割合が減少していきます。この過程が肝硬変の進展。
さらにそういった飲酒行為を繰り返していくと御想像の通り正常部位はどんどんと減り続けるとともに回復の限界を迎えた時点で肝硬変の「症状」が出てきます。そこから始まるのは種々の「肝機能の非代償性」による宜しくない症状の数々。
易出血性、腹水貯留、肝腎症候群、意識障害など多様。静かな大工場と言われる肝機能を代用する本当にたくさんの薬を飲んで貰いながら腹水を抜いたり心不全のコントロールを行ったり、食道静脈瘤などの破裂に備えるわけです。
しかし、彼らに共通するのは本当に「病識の欠如」だと感じています。いくら患者さんと話をしても、本当に多くの場合「大して飲んでいない」という詭弁を繰り返すのみ。その酒量を聞くと唖然とするような物がほとんど。休肝日もほぼありません。
そして内科病棟へカエル腹でやってきたときにはもう手の施しようもないことが殆どです。ウイルス性肝硬変は日本において今後劇的に減っていくのは確実です。しかし、日本においてはアルコール依存症由来の肝硬変は確実に現在の10-15%の率から時間をかけて半分以上の肝硬変要因になってくることと思われます。(非アルコール性脂肪肝炎NASHの上昇率がどこまで行くかにもよりますが。)
厳しいです・・・。
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