2020年10月14日水曜日

ガン末期の患者さん達の身の寄せどころ

ガン末期の患者さん達で家族の縁の無い人達がいます。

自ら家族を捨てた人、自然と類縁の人々がひとりひとり亡くなって最後の一人となってしまった人、家族から見捨てられた人、家族との縁の切り方は様々です。

本当にいろいろな人が居るんだな~と自分でも驚くほど、様々な理由で家族の絆というのは切れていきます。犯罪、病気、借金、家出、火事、浮気、リストラ、アルコール、薬、DV等など確かに想像はつくけどここまで簡単に家族というのは崩れるのだなということを日本に帰ってきてからの6年で学びました。

どんな人生を送ってきたにしても、どんなに金があっても人の半分は癌になる時代。様々な人達が家族と縁が切れた状態で病院に流れ込んできます。無論私が行っている在宅のバイトの患者さんの中の一部の人達のように、手厚い看護を受けて家族に囲まれて最後を迎える方も居られますが、それはごく一部。

痛みを取り除き、呼吸苦をなるべく意識させないように患者さんを安楽な状態に持っていくのが私の仕事ではありますが、家族と会えない状態での人生の最後は「私には」寂しく見えたりします。ところが、それはごく皮相な見方だと思えることが以前ありました。

咽頭癌の患者さんでしたが、私の受け持ち患者さんではありませんでした。時々この方の気管切開チューブを交換するお手伝いをするくらい。明らかに癌が大きく盛り上がって首を物理的に強く圧迫、最後の最後まで繰り返される大量失血や呼吸苦に悩まされて看取られましたが、この方は何度インタビューしても決して家族関係を「誰にも」話しませんでした。話を気管切開のチューブを交換する時に時々聞いてみてもニヤッと笑うだけで決して話さず、生活保護受給者としてその最後を迎えたのでした。

この人にとって家族と言うのが何だったのかは最後まで想像する事さえも出来ませんでしたし、この人の最後はもしかしたら彼なりのダンディズムに貫かれた最後だったのかなと後になって考えたりもしたのでした。逆にこういう態度を取らせた彼の「本当の」人生の遍歴と本当の元の家族の人達を見てみたいと考えたりしました。

しかし、どこでどういう最後を迎えようと、家族に囲まれていようとヒトの最後は一人ですね。それだけは確かだと思うこの頃です。


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