2019年12月25日水曜日

寂しく一人で死んだクリスマス・イブ

突然朝の院内専用PHSがなりました。

電話の向こうからは当院の精神疾患患者が退院後に社会復帰をする上で一時的なケアを行っているケア施設の施設長が発する声が聞こえてきました。「先生、もうお聞きになられましたか・・・」

最初は何のことか意味がわからず、正直に「何か有ったんですか?」と問い返しました。すると、私の外来に来ていた肺癌末期の患者さんが家でひっそりと亡くなっていたというのです。

この患者さんは私が日本に帰ってきてからすぐに別の先生から引き継ぎずっと診てきていた患者さんで、糖尿のコントロールに私が必死で取り組んでいた方でした。少しだけ理解力に難はあったのですが、心は素直そのもので少年のような人物。ただ、どうしても入院だけはしたくない、絶対に入院はしない。入院するくらいなら死んでもいい、という発言をしていました。

この方ある等級の精神障害者手帳を持っていた方で、入院においてもお金はかからないしご飯も病院できちんとカロリーが計算された御飯が三度三度ちゃんと出るよ、と言ったのですが彼の答えはいつも決まって「やだ。絶対ヤダ」という簡単な返事。

糖尿のコントロールや肺癌の痛みが出たときの対応がきちんとできるようにしておけば良いよと言っても、答えはいつも「入院だけは嫌だ。先生にはお世話になっているけど入院だけは絶対しない」というものでした。

半年にして一回撮っていた胸部写真に異常陰影を発見してCTで確認。ほぼ悪性腫瘍で間違いないから今ならサイズも十分小さいし、大学病院で切り取ってもらえば全然長生きできるよ!とは言ったのですがやはりこの時点から「絶対手術とか入院とか嫌だ」という一点張り。

なにか過去に入院に関連して、私の知らないなにか嫌なことが有ったのかもしれません。しかし、結局のところ私は彼を治療に導くだけの言葉を持ち合わせていませんでした。
痛みの訴えや呼吸苦の訴えが無かったことだけが私にとっては救いでしたけれども、それは私にとってという私だけの救い。結局、私は彼を救うことはできませんでした。

友達がかけていた電話の記録からするとおそらくイブにひっそり一人だけで昇天したようです。
ほんの一年前に亡くなられた100歳近い彼の御母堂のもとに安らかに旅立っていった彼のことを思ってい一人飲んだクリスマスの夜でした。


0 件のコメント: