2019年12月16日月曜日

突然の病

病院のある役職者が病に倒れました。

酒に強く、食い物もガッツリ食べてとても70代と思えないほどの精力を感じさせる人物で、よく飲みに出てよく遊び、夜の街には彼を待つママが居るほどでした。もちろん押しも強く、大抵の人間は彼との問答では勝てません。

本当にひと月前まではゴルフコンペで上位に食い込むほどのレベルだったのですが、突然の大量下血とるい痩、そして下半身の知覚麻痺がこの人物を襲ったのでした。
大学病院で検査入院を繰り返す間にも症状は進み、最終的についた診断はある臓器がオリジンの癌だと判明したのですが、それが判った時点ではすでに全身に転移しているという有様。

今日、当直が明けてお見舞いに行って参りました。

大学病院の高層階へ行くと清潔で無機質な病室には奥様がソファに座っておられ、彼は静かにベッドに横たわっていました。前もって近所の寿司屋でほんの30分前に時間を合わせて握って貰っていた特上の握りと近所のコンビニで買いこんできたオッサンでも大好きだと思われる菓子の数々をお茶と一緒に持っていきました。

彼が眼鏡をかけて私の姿を確認したのですが、意外と元気で言葉も明晰。思考も全く普通そのもので、足が動きづらいことを除けばとても病人とは思えません。
しかし、その口から出てくる言葉は後ろ向きのものばかりで、いろいろと言葉をかけるものの奥様とともにその予後を悟りきったような口ぶりでした。

あまりお邪魔しては疲れると思い、十分も居なかったのですが、話しているときにお互い無言でつい涙がポロリと目から溢れてしまいました。

発見さえ早ければ5年生存率は99.9%以上のタイプの癌。日頃が元気だっただけに高血圧以外には注意を払っていなかったようです。彼の存在が無くなっているオフィスは実に異なった雰囲気で、異様に寂しい限りです。

奥様に「くれぐれもよろしくお願いいたします」とお話しして別れたのですが。やはり泣けてしまいました。


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