今日も肺癌患者さんが見つかりました。
この患者さん、私の外来に定期的に来ている糖尿その他の病気を併せ持っている患者さんなのですが、この5年ほど糖尿病も落ち着いたコントロールを見せていたのですが、一人暮らしをするようになってコントロールのレベルが急激に悪化。
先日は糖尿病性ケトアシドーシスと言う状態になり緊急で入院さしてもらう状況になったにもかかわらず「絶対に入院は嫌だ!」と言い張って入院してくれませんでした。何人も説得を行い、「命の危険があるから入院しないと駄目。家に帰って云々という状況じゃないよ」と説明してもこれまた聞き入れません。
結局、輸液を大量に行い血糖を一日だけ外来でモニタリングさせて貰い最終的には帰っていきましたが、何故入院したくないのだと本人に聞いても「自由が無くなる!自由が良いんだ」と言うのみ。結局、これでは全く駄目です。本人は少し理解力も足りず、ある疾患で精神科に通っておられる方でもあり、インシュリンの自己注射など出来る方ではありません。
三度の御飯も全くランダムで、摂ったときもおにぎり一個とかだったりする時も有ればラーメンの濃いのをドッチャリ食べたりとこれまたメチャクチャ。しかも、血糖の自己測定も出来なければインシュリンの自己注射など更に夢のまた夢。
入院して一時的にでもレベルを元に戻して何とか治療のレベルをあげようとして入院の説得を行ったこともあるのですが、これは上述の如く繰り返し失敗。
ところが、今回久し振りに定期検診の一環として行った胸部レントゲン写真を撮った所、肺に怪しい影が。「これは・・・」という事で胸部CTを追加で撮って、腫瘍マーカーをみてみた所どうやら腺癌の可能性が濃厚な状況です。
しかし、この時点では痛みもなければ呼吸苦もない状況ですので本人に「今ならまだまだ間に合う可能性が高いから、大学病院に紹介するから治療しましょう!」と言っても「入院するから嫌だ!」という一言で全てを終わらせてしまいます。
「手術しなくても済む治療法の選択とかもあるから検査と思って行ってみませんか?紹介状も直ちに書くから」と言っても「入院するのは嫌だから」の一点張り。
抗生物質のように抗癌剤を服んで治療する時代も身近なものになり始める予感がするこの頃ですが、それがどの施設においても普通になるまでにはまだまだ2歩も3歩も遠い状況。しかも薬もすべての症例で著効するというのには程遠い状況ですから。
命が日々削られていっていることを説明しても「入院が嫌」「自由が無くなる」と言って拒否するこの患者さん。どうしたら説得できるのか。確かに治療しないのも自由なんですが・・・。
医者としての力量不足を痛感した今日の午前の外来でした。
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