訪問診療のバイト先で訪れる家に私が個人的にファンになっている爺さんがおります。
密かに猫オジサンと心の中で呼んでいるのですが、このおじさんが味わい深い方なのです。本人は慢性閉塞性肺疾患(COPD)とアレルギーでいつも長い経鼻チューブを鼻につけておられる方なのですが、調子が悪いと椅子にもたれかかり、調子が良いと淡々と自分の周りのことや体調のことを話してくれます。
呼吸苦が強い80代半ばの方ですので、実際に外出もなかなか出来ないのですが、老いた猫と2階建ての古い公団の1階で質素に暮らしながらいつも鍵など閉めずに生活されております。
看護師さんと二人で部屋に入っていくと大方キッチンで皿洗いと手料理を作って居られます。御自身いわく「まあ、かーんたんな男の手料理だわ〜」等と言って非常に可愛い笑い方をされるのですが、テーブルの上に載っかっているものを見た限りではナカナカ手のこんだのもささっと作っているようで、私の一人暮らしなどとはレベルの違う手料理生活。
こういう事をしているから80代半ばを過ぎても頭はしっかりしてるんかな〜等と考えてしまうのです。
この爺さんによれば家の中と外を15歳を過ぎた老猫が出たり入ったりしているとのことなのですが、実は私自身はその猫を一度も見たことがないのです。
しかし、猫砂はいつも玄関の箱の中にきちんと敷いてあるし、時々は砂を掻いた後もありますからきっと居るはずなのですが、姿は勿論のこと鳴き声も聞いたことがないという有様。
まあ、猫だから自分の経験上からも姿は見えなくても居る時は居るので心配はしていないのですが・・・。
ところで、この爺さんが最近笑いながら語るには「もうなーんも楽しいことが無いがね。はよ死なんかな〜、無理かね?先生。」と・・・。
私もCOPDの方々の最後は何人も看取ってきましたが、この爺さんはまだまだ元気ですので、肺炎さえ避けられればまだ何年も元気そうです。
何とか長生きしてほしいなと思う大好きな爺さんなのですが、ここはしっかり診察して季節にあった適切なアドバイスを毎回行っていくしかありません。
こうやって爺さんのことを改めて書いてみると、自分が「人生を淡々と無欲に生きる」枯れた感じのオッサンが大好きなことに気づきます。おれも目指そうかな?
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