2019年5月3日金曜日

うちの子は勉強しないという親

看護師さんの嘆き節の一つに「うちの子が勉強せんのよ」というものがあります。

どちらかと言うと全国の親御さんの比較的共通した嘆き節と言ったほうが良いのかもしれませんが、私の場合は脇で多くの学童期の子供さんを持つ看護師さん達が子供の事を話しているので、まあ、否が応でも耳に入ってくるというのが正確なところです。

私自身は病棟で働いていると、聞くとはなしに耳に入ってくる日常的な話ですし、特にコメントする立場にもないので直接は何も言うことはないのですが、聞くとすれば正直に発したい質問はただ一つ。「皆さん御自身は勉強する姿を子供達に見せていましたか?」というものです。

そもそも自分自身が出来ていなかったことを子供がするか?という大疑問。目標とするロールモデルが身近になければコピーはしませんよね?

しかも、その子達はまあ、不義の子でも無い限りは御自身とその配偶者の遺伝子を乗っけているわけですから、大きな声では言えませんが、なかなかトンビがタカというわけにはいかないでしょうし、殆どの場合は統計学的に蛙の子は蛙で終わってしまうと考えるのが普通はないでしょうか。

終戦後から昭和40年台の半ばくらいまでの二世代分位の間というのはまだまだ日本には”兄弟の多さと家庭の貧しさ故の進学断念”というのを経験する多くの賢い人達がギリギリ居た時代だと思います。才能が有ろうと無かろうと、数多い兄弟たちの中で年上の人間は我慢をしてでも下の兄弟達の為に何かをギブアップするというのがゴロゴロしている時代でしたし、実際に私の親戚内でもそういうおじさんおばさんの存在は至極普通でした。

ですから、本はたくさん持っているし、何かをさせると極めて的確な指摘は出てきても、集団就職の一環で食品工場に出ていっていたり、地元の市場にそのまま就職したりという事がまだまだ普通でした。

ところが、昭和の後半くらいから収入云々とはあまり関係なく取り敢えず塾くらいには皆が行ける稼ぎになる過程が増えてきました。それでも、その時代になると次第に出来ない子は塾に行ってもヤッパリ出来ないし、金はあってもバカはバカと言う感じの時代に。
この時代がかなり長く続いた後、日本という国が相対的に成長しなくなる中で収入での経済的階級の固定化と言うのが起きてきたような気がします。(我が家のような九州のど田舎では周りにそもそも塾自体がなく、親も活かせる金など何処にも無いのはバカな私でも知っていました。w)

今の時代、私には逆にその固定化がシングルマザーの家庭などにガッチリ固定化されている気がして大変嫌な気がします。(看護師さんの家庭はシングルマザー多いですから!)
話を聞いていると、家に本などどこにも積み重なっていないし、どうやって学習というものを進めていくのかという指示も出せないし、大学進学の経験も(看護大学を出ていない限りは)無い家庭でどうやってその子供に21世紀の今の時代に大学進学を考察させることが出来るのか。情報を検索する能力がある家庭ならまだしも、スマホ以外を使っては多くはそれができない環境だったりします。

実際の所、我が家でもアメリカに居た頃の我が家庭内ではアメリカでの進学など勿論誰もがしたことがない状態が当然でしたので、教えられることと言えば”教育水準を上げていくことの大切さ”を子供達に説くのみ。
具体的な方策は学校任せ、子供任せでしたが、何とか子供達は自分達でそのような道筋をつけてくれたと思っています。私達が子供達に出来た最大の仕事は本を揃えることと、家で論文を書いたりする仕事姿を見せること、将来どんな仕事をしたいならどれくらいの勉強が要るか、その為にはどういう道筋が良いのではないかということを話す事で大まかに示すのみ。

後は正直とりたてて何も教えませんでしたし、教えられませんでした。そういう意味では自分は自分が親にされたこと(されなかったこと?)を己の子供達にも繰り返した事になりますか・・・。

私は今でも親として子供達に残せるものは遺伝子と人生における哲学だけだと思っています。カネもすぐに消えるし、形あるモノもいつかは消えるのは100%確実ですが、遺伝子とアイデアはきっと有形無形の状態で連綿と繋がって子孫達に影響を与えるでしょう。

”勉強をしなかった”あなたが”勉強をしない”子供を責めることは出来ないのです。そもそも、それが理解できるような賢い子であれば、勉強もしなかったし出来なかった親の事など、とっくの昔に見透かしているはずでしょうし。(それを言うとかえって怒られるから言わないだけでしょう。w)(また、座学だけが勉強というわけではないことも賢い子なら、親の愚かさを超える形で理解できているはず。)

要するに子供というのは良し悪しは別として、日常の習慣も含めた自分の複製そのものなのですから。勉強しないと嘆くのであれば、自分が同じくらいの歳の時にどうだったか思い出すとよいのではないでしょうか。多分まるっきりのコピーでは?

本は読ませてあげましょう。ロールモデルを探してでも、モチベーションを上げてあげましょう。塾に送り込めば子供の未来の”質”が変わるわけではないと思うのです。

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