2019年5月5日日曜日

喫煙者が珍獣となる時代

この度、日本禁煙学会に入ってちょっとした論文作成の準備をはじめました。
折角入会して金払うんだから、論文書いて医者の仕事をしましょうかということで。

喫煙のもたらす健康への害に関しては周囲の患者さんや義理の父の癌を通じて嫌というほど解っている私ですが、少なくとも21世紀の初頭である現時点ではタバコの二次的、三次的煙害を完全に自分達の生活から遮断することが出来ない状態です。

The Lancetの統計(日本特集号!2011/9)によると2007年には能動的喫煙者の非感染性疾患と外因による成人死亡の主要な2つの決定因子は喫煙と高血圧であるとデータでクッキリと明示されています。

2007年のそれは数字としてトップにくる喫煙が126,000人。二位の高血圧が10万人ちょっと。運動不足が4万ちょっと。高血糖が3万ちょっと。それにほぼ並んでいるのが食塩の摂取です。飲酒はその次くらいで3万を少し超えるくらい。ピロリの感染も、C型肝炎ウイルス感染もとてもとても煙草の害には追いつきません。

しかも、今現在明確なのはピロリによる死亡者も、B/C型肝炎ウイルスによる死亡者も加速度的に減っていくのはほぼ間違い無い状況が予測されていること。抗菌療法と食生活の水準上昇によるピロリの激減と抗ウイルス剤の登場による肝炎ウイルスの消滅と昭和の悲劇として伝えられるであろう注射針の使い回しの廃絶でこれらは確実に事象としてレアな疾患になっていくはず。

ということは、今後残っていくのは高血圧心不全を含む冠動脈疾患や未だに治療の出来ない癌、そして老衰などが相対的に死因として増えていくことになるのでしょうが、冠動脈疾患にも癌にも双方とも関わってくる喫煙というのも未だに喫煙率としてみると、未だ男性で30%。女性で10%前後です。

しかし、傾向として素晴らしく良いのは若年男性の喫煙率がコンスタントに他の年齢を超えて減少率が高いことでしょう。以下の厚労省作成のグラフにその傾向が如実に現れています。

若年者に限って言えば、やがて男女の喫煙率にはほぼ差が無くなるという時代が来るのではないかという気がします。上のグラフの落ち方からすると多分、令和10年頃には若年層における喫煙率の同一化が起こるような感じですよね。(あとは年寄りの死滅を待てばw)男女の喫煙率は多分10%を切ったあたりで交わった後、ごく緩やかなカーブを描いて低下していくものと思われます。

日本における全人口の10%を切ったあたりになると、私的な予測にはなりますが、駅などでは今ある喫煙用のコーナーも廃絶、路上では勿論条例で喫煙禁止。多くの店では極一部の例外を除いて分煙の許されぬ禁煙・・・ということになって来ると推測しています。

となると、道端を歩いていて喫煙しているの人間を見ること自体がレア・イベントになってくるでしょう。アメリカで昔言われていたような大学構内で喫煙者を見つけるのは「スーツを着て歩いているワニ」を見つけるほど難しい、という感じに。w

20世紀末の男性50%程度と比べるとかなり減少してきてはいますが、女性はほぼ変わらず。しかし、とりあえずこの減少に一番パンチが効いているのは多分タバコの値段でしょうね。当時と比べるとタバコの値段はほぼ倍!
ワタシ的には最もよく売れるメビウスあたりを一箱1000円にすればJTのタバコ産業としての未来はほぼジ・エンドになると思っています。

実際に周囲のタバコ好きの患者さん達を見ていると、10円、20円のアップは物凄いプレッシャーのようで、これが値上げで1000円になれば多分キューーッと財布を締め付けられて一貫の終わりでしょう。まあ、タバコ作付農家の方々もそれに備えて植えるものを替えておくのが賢いかと。w

一日一箱吸うとして一ヶ月でタバコだけに3万円も出費するのは多くの人間にとって精神的にも経済的にもキツイはず。そのうちタバコ泥棒や闇タバコ作りが商売になる時代が来るのかな?ライターとかもきっと美術骨董品として取引されることでしょう。(精々、花火かキャンプ用の火付け道具として生き残るか?)

後、重要なのは電子タバコ潰しですね。この件はまた別の機会に。

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