2024年8月2日金曜日

魂が引き継がれるという事

癌の末期の患者さんのところに、頻繁にご家族が御見舞に来てくださっています。

有り得ない程しっかりとしたいろいろな意味で美しいご家族様で、今の時代にこんなに辞宜正しく美しい日本語を使う人達が未だ居られたか?という程の人々。そして、その患者さんであるお婆さんも苦しい息のもとでもきちんと我々医療者側に受け答えをして下さるのでした。

私としては食べる事の出来ないこのお婆さんに襲い掛かる癌による痛みを可能な限りコントロールしてあげる事だけです。

この御親族の方々は、御主人は勿論のこと、娘さんやお孫さん、そして曾孫さん達も頻繁にやって来られてベッドの脇でお婆さんに語り掛けてくださいます。曾孫さんはまだまだ保育園児と文字通り玉のような可愛い赤ん坊。

こんな家族の素晴らしい命が遺伝子という乗り物を通して受け継がれるだけでなく、その「育てられ方」が引き継がれる事が私には何よりも素晴らしい事だと思うのです。私は自分自身の事なので良く解るのですが、どんな親にどうやって育てられるのかは遺伝子以上に絶対大事だと思っています。

私はどう足掻いても粗野な自分の一面を捨てることが出来ません。野卑では無いと思うのですが、スマートに何かを伝える、実行するという事が本当に出来ないのです。親が悪いという事は言いたく無いのですが、やはり自分の親を見ていると自分のバックボーンが「上品」とか「戦いを避けて解決」等という生き方とは程遠いんですよね。w まあ、凡夫そのものです。

まあ、今更変えようとしても無理ですし人前でも愚痴は言いませんが…。(<言っている)

癌の末期であってもその周りに花の咲いたようにお婆さんの集めた素晴らしいキャラクターの人達とその遺伝子を運ぶ家族の皆さんを見ていると、例えいつの日にかは消える事になるお婆さんの命が物理的に消えても、その遺伝子と魂は消えないなと何時も頭の中で独り言ちる自分が居るのでした。

御家族さんのいらっしゃらない時に、ベッド脇でお婆さんとお話をする事が毎日続くのですが、苦しい息のもとでも掠れた声でいろいろとお話をして下さるお婆さんに逆に慰められる未熟者の俺でした。

慈母っていうのはこんな方なんだろうなと思うのです。


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