2024年3月13日水曜日

実は夫婦で病んでいると思う

ある患者さんを診ています。

食思不振ということで内科の大きな病院から送られてきた患者さんなんですが、歳は私とあまり変わらない50代の女性。本当に枯れ木の様に痩せてしまっていて、BMIは11台という普通では有り得ない痩せ具合。見ていると「こうなっても人間というのは生きていられるんだ」と逆の意味で驚くほどの患者さんです。

この方、実際に御主人と来られたのですが見かけは母と息子の様に歳の差がある感じにしか見えません。要するにこの方の過剰な痩せ具合が見かけを実年齢よりも遥かに老けてみさせているのでした。そして恐らくは実際にも細胞レベルで老化というのは起きているのではないかと疑わせるほどの変化を感じます。

さて、この御夫婦が別の病院から当院にやってきた時に感じたのは言葉ではなかなか表現しづらい様な「強い違和感」でした。

奥さんに物凄く優しい御主人なんですが、何というかその接し方はまるで腫れ物に触るかのような話し方。夫婦というよりも病んだお婆さんを看る孫のような感じなんですが、後でこの「御主人」に話を伺うと、嫁さんは精神を病んでいると思うときちんと言われるのです。しかし、御主人はそれがどういうものかは理解出来ないと言われるし、私はこの御主人との対話を行っていても、御主人の口から語られる奥さんに関する話の内容や遣り取りを通して上に書いたように御主人の種々のリアクションにも強烈な違和感を感じるのでした。

精神科医でない事もあり、それを正確に表現できないのは毎度の事ですが御主人も込みで診察をされた精神科医は強い含みを持たせて私に「それはあると思う」と言われました。ご主人に関しては何も診断名は聞かせていただけませんでしたが…。

さて、奥さん自身は既にご飯を食べなくなって二年ほどになるとの事でしたが、BMIが11台になるような人というのはレスキューは極めて困難で、医師によっては最初から諦めている人もフツーに居られます。実際に今までどの病院の医師もこの奥さんの体重をリカバーさせる事に成功していません。

御主人はいろいろな間接的努力が無理であれば経鼻栄養や胃瘻までお考えの様ですが果たしてそれが奥様にとって幸せな選択なのでしょうか。

疑問は深まります。

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