2024年3月21日木曜日

AIと医療の未来

我々医師の間で見る事の出来るフォーラムではAI(人工知能)の登場による医療現場の変革に関して様々な意見が出されています。

このようなAIシステムは各業界、各業種で様々な導入のされ方が始まっていますが、そもそも今現在も猛烈な速度で改良が続いている領域ですから、昨日の話が明日も正しいと云う訳でもなく、まさに金と人が参集してモリモリと成長している分野。

アップルの株価が低下してマイクロソフトが伸び続けているのはこのAI分野への投資が失敗しているか成功しているかという部分の差に関する評価だと巷では噂されている訳です。

さて、我々医療業界ではまず最初にかなりのレベルで話題になり始めているのは画像のAI診断です。これに関しては放射線科医の仕事を奪うとか奪わないとか言う話が喧伝されていますが、この画像の診断制度に関しては世界最高レベルの読影能力をコンテストで証明されている日本人ドクターの話が私にはとても衝撃的でした。

彼が癌がその画像の中にあると既に判っている画像の中からその癌をポイントアウトしていくのをAIと競ったら、かなりのレベルで互角もしくはAIが少し上かもというレベルだったとの事ですが、彼がAIには勝てないと思ったのは「AIはこれを24時間、365日続けられるという事」だといった点です。

まさにその点こそが非人間的なところで、更にこれからはAIが更にdeep learningを繰り返すことで、診断精度は時間が経てば経つほど(正しい学習モデルが存在すればするほど)更に上がっていく訳で、人が勝てなくなるのは仕方ないのかなと…。

また、胃カメラ(gastroscopy)の画像診断も高精度になってしまっているそうで、人はカメラを突っ込んでいく事が殆ど唯一の仕事になっていくのでしょうか?8Kの画像で視たい部位を映し出し、そこの画像をもとに高い精度で病理学的診断予想をしていくという何とも凄い世界。正診率はこれから更に上がっていく事でしょう。

こういったAI診断が進歩してきて助かるのは、画像に関する「非専門医」、つまり非放射線科医ですよね。画像診断AIを走らせて画像を読ませる事で、専門家に読ませて法的な効力を発生させる前に予備診断を迅速につけて緊急時の対応を行ったり、遠隔地にある画像をサクッと読み取って一般医の為に精度の高い読影を代行してくれるシステムが存在するのは本当に助かります。

誰が何を言おうと、将棋のAIと一緒でこれからはますます非AIだけでは「読影さえも」進まない時代が来るのは避けがたい事になる、というかもうそこに来ていると思います。もしこの記事を10年後に読んだら「ああ、まだそんな入り口の時代やったんか~」と懐かしく思う事でしょう。^^

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