2024年1月19日金曜日

今年最後の年賀状

ある精神科病棟から診察依頼があって、そこでの診察を終えた後にその棟を去ろうとカードキーをスワイプした瞬間の事でした。

「センセ~イ、センセ~イ」と甲高い声が背中から追いかけてきたので、フッと後ろを振り返ると車いすに乗った見慣れた顔のお婆さんが必死で車いすを漕いで追いかけてきていました。

何事と思い、病棟から出るのを止めて近づいて行ったところ何か片手に持ったハガキの様なものを私に向けて振っていました。「コレコレ!」と言って私に手渡そうとするので、ナニナニ?という感じで手に取ると年賀状ではありませんか。

お婆さんは渡し際に「先生の名前忘れちゃったんだけど、ここの病棟に滅多に来ないからやっと渡せた~、良かった~」と言って年賀状を渡す瞬間をずっと待っていたんだそうです。何だか可愛らしい話ですが、その宛名の所を見て二度微笑んでしまいました。

曰く「?先生(お名前忘れましたごめんなさい。お許し下さい)時々XXのナースセンターにみえてムラサキのような?手術着のようなユニフオームのおもしろい先生」(文面ママ)という宛先で始まっていました。裏面には「先生とって今年1年が素敵な1年になりますように。」(文面ママ)と丁寧に書かれておりました。手術着のようなユニフォームというのはスクラブの事ですね。

驚いたことに、このお婆さんは裏面を奇麗に印刷した年賀状を作っていて、病棟を自分の手紙の返信先としてきちんと仕上げておられました。時代が違うな~と思うとともに、そのお婆さんの小さな世界の中で私が年賀を出して貰える対象として選んで頂けたことは大変光栄な事でだと感じました。

別れ際にお婆さんに握手をして笑顔で病棟を去った私ですが、私こそ「お婆さんの一年が良い年になりますように!」と心の中で思った次第でした。

帰ってみてお婆さんから頂いた年賀状を見た所、外れてはいたのですが、今年の年賀状の一等が何と現金30万円!になっている事に驚いた次第でした。

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