2023年4月18日火曜日

すぐ仕事を辞め「た」人…続き~

昨日の話だけではちょっと観念的すぎるので、ちょこっとだけベクトルを変えて私の勤める病院で起きた超短期離職の「実話」を出してみます。(精神の問題でお辞めになった方)

皆さんの周りでは余り統合失調の患者さんを見かける事は無いですか?「無い!」と言い切れる方は多分、居られないと思いますが私の記憶を遡って人生の最初に出てきた統合失調の患者さんは小学校低学年の頃の近所に出没していたお婆ちゃんだと思います。

農学部の真隣に住んでいたのですが、農学部というのは演習林や牧場など広大な敷地があってそこが我々糞餓鬼軍団の絶好の遊び場になっていました。そこには恐らく農学部の大学生の捨てた当時のエロ本や、子供の基地となる沢山の隠れ家、溜め池、馬場、牛の放牧地などがありました。そこを我々は縦横無尽に走り回って昆虫を中心にいろいろな生物を採集していたのですが、その牧場に行く途中の道すがらにババシャツ1枚にいつも紫色の薄汚れたスカートを履いた婆ちゃんがそれこそどこからともなく出現していたのです。

何時も何かに怒りながら怒鳴り散らしているのですが、大体のターゲットは我々糞餓鬼。何を言っているのか全く解らないのですが鬼の形相で怒り続けていました。我々は何時もただ恐る恐る脇を通過するだけ。みんなの間では「ちょーせんババー」と呼ばれていましたが、当時私自身は「挑戦」してくるから「ちょうせん」と呼ぶものだと思っていましたが、大きくなってから思い出した時にもしかしたら「朝鮮」だったのか?と考えました。何を言っているのか解らなかったのはもしかしたら韓国語だったのかもしれません。しかし、そのお婆ちゃんも何時の間にか視界から消えて二度と大学の中には現れなくなっていました。

物心ついて初めて統合失調の確定診断がついた人物と遭遇したのは高校一年の時でした。高校の体育の時間に背の高いN君という人物がいきなり列に並んでいたH君という他のクラスメートを振り向きざまに殴ったのでした。殴られたH君は何がなんだか訳も分からず呆然としていましたが、その殴ったN君は高校の入学時に一番の成績で入ってきた生真面目な人物でした。

後になって思い出すと、そう言えば暫く前から人と話す時に視線を右手で隠すようになりだして何時も暗い顔で下を向いていたので、高校生ながら「何だか変わっちゃったな」くらいに思っていたのですが、以降学校に来ることはなくなってしまいました。後で先生がクラスで語ったところによると、「悪口を言われている気がした」というような典型的な症状の発露と思われる発言があったとのことで、恐らく初発症状だったのかと思われます。

その後も大学入学後に明らかに発症してしまったクラスメートも居りましたし、上の学年にも下の学年にもやはり1人か2人は毎年居りましたので、それくらいの時点で統合失調が全く珍しくない分子疾患なんだろうなと感じ始めていたのも事実です。ウィキによると障害有病率は0.1~2などと書かれていますが、普遍的な疾患ですよね。

医学部の学生だけでなく、優秀な成績で医学部を卒業した医師の中にもその後に発症する人も「極稀ならず」存在していて、入院してしまってそのまま戻らない人もいれば、治療がきちんと奏効して日常生活に戻っている人もいるのです。

そんな中、2年ほど前に我々の病院に入植してきた女性看護師さんが居られました。ところが、その看護師さんが入職直後より他の看護師さんに「私、声が聞こえるんですよ」とか「見えるんですよ」とか言い始めたのでした。令和版の宜保愛子(歳バレ)か?と言いたいところなんですが、「監視されている」とか言い出したため、一旦精神科の先生に診察していただいた後、仕事は一旦休職して頂いて外来で治療通院となったようです

実際のところ声が聞こえるけど、それを他の人に言ったら「頭がおかしいと思われるから」言わないんです、などというような人も世の中には居られるとのこと。人の精神構造というのは本当に精妙、複雑怪奇なものですよね。

学校の勉強ができるから統合失調と縁が無いと言うのとは寧ろ逆の印象を持っております。勉強が出来るからこそ…と言う話のほうが多いのかもしれません。IQと発症頻度の相関を調べれば判るのでしょうが。なんだか周囲の医学部関係の発症者を見ると生真面目で融通の効かない人が多い様な印象ですが、これは統計ではなくて主観そのものです。


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