2023年4月22日土曜日

歌舞伎好きのお客さんのおもてなし

東京からのお客さんを饗(もてな)すためにホテルで昼食をとりました。

昔々、私が長崎で生まれて初めて家庭教師をした時に教えた中学生の子供が今ある会社を経営しているのですが、その会社で働いているトップの人物が名古屋の御園座で御自分の贔屓筋である中村勘九郎と中村七之助の演出する「陽春花形歌舞伎」というのを観に来る為に名古屋に来たのでした。

というわけで、私自身は特に饗す理由もないのですが、何と言ってもその教え子とは昔からの付き合いですし、来名した人物の事をある程度その教え子から聞かされていたのですが、そのバックグラウンドヒストリーが波乱万丈過ぎた事もあって、その物語をいろいろと聞いてみたいという考えがあったからでした。

実際に話を始めるとそのヒストリーを聞くどころか歌舞伎の話だけで二時間半がすぐに経ってしまい、12時からゆっくりと食べ始めたフカヒレその他の素敵なデザートに舌と腹を満足させつつもその歌舞伎の世界の打ち明け話のほうがよっぽど面白くて、思わずずっと聞き入ってしまったのでした。

歌舞伎の「か」の字も知らない私が初めて聞くような格付けの話やアホの海老蔵の話、その他諸々の細かい話が濃密にその口から出てくるのですが、何となく今までテレビの中で聞いていたようないろいろな家名が次々と出てきてはその説明が始まってしまうわけで、なかなかメモ無しで理解するのは大変でした。その他にも公園におけるチケットの値付けの状況や歌舞伎の舞台の面白さ、この演目ではどこを観るべきか、スーパー歌舞伎の話、ワンピース歌舞伎の話など「全く知らない」世界の話が出てきて只々圧倒されました。

完全に個人の予想なんですが、歌舞伎を歌舞伎座(現場)で死ぬまでに一度も観たことのないまま一生を終える人というのは日本人全体の7-8割は居るんじゃないでしょうか?政府の調査もありますが、歌舞伎って何かお値段や内容的にも、そして何よりも演舞される場所が限定的と言う感じがします。名古屋ではそれ用の場所として御園座が存在していますが、地方ではそうもいきません。

取り敢えず、波乱万丈の人生の話など一言も聞けないままホテルの食事を済ませ、御園座の講演開始30分前に玄関口に送り届けておもてなしを終了いたしましたが、その玄関口には映画で観るような上品な和装の叔母様方も並んでいて、「俺の知らない世界」というのを目の当たりにした一日でした。


0 件のコメント: