私にはペンライトを振って応援するようなアイドルがおりません。
むかしから、何かを忘れて大熱狂と言うことがほぼ無かった人生でしたので、何かに取り憑かれているかのように熱狂している人を見ると何となく羨ましくもあります。ビートルズに一時期ハマっていたことはありますが、それも何というか「おお素晴らしい!」と言う感じで、ラジオで聞いた瞬間から大好きになった音楽との出会いがPlease Please Me.とLove Me Do.でして、本当に偶然付けたラジオから聞こえてきたこの曲の素晴らしさにポピュラー音楽童貞の私が一瞬でやられた瞬間でした。
直ちにその曲名をメモして当時のレコード店へ行って、それがビートルズと言うグループの音楽っだと知ってからは学校の勉強よりもその知識を蓄え、曲を聞くことに専念した思い出はあります。当時NHKでビートルズの大特集がたまたまあって、研究家の香月利一さんという方(残念ながら51歳前後で早世されてしまわれているようで、その後のご活躍を見なかった理由はそれだったのかと今日になって愕然としています。)が当時知られていた全ての曲を流してその曲の背景などを時代やビートルズの中の動きを語りながら解説してくださるという予定が流れていたので、「一生のお願い!」と言う感じで親父に頼み込んでオートリバースのカセット・デッキを買ってもらった覚えがあります。
とは言え、その当時の音楽ファンというのは今のファンとはちょっと感じが違って、女性がアイドルに熱狂という感じがメイン。勿論、女性アイドルに男子大学生などがハマるというようなことも当然当時もありはしたのですが、やはり音楽を聴くメディアや世界の広さが当時と今では全く異なりますからいろいろ比べてもしようもありませんけどね。
しかし、今の時代当然のようにオジサンであってもアイドル・グループにお金を注ぎ込み、時間を割いて会いに行く人達が沢山おるわけでして、その年齢層も性別も様々。ただ、私が中高生だった頃に比べると圧倒的にそれぞれのアイドルの賞味期限が異様に短い気がします。無論、生き残っている人もいないことは無いのですが、何だか「卒業」と言う名目で退場させられている人達が居るような…?
まあ、何十人で集まって一絡げにグループを作るのでしょうから、卒業することでそのグループは人間の細胞の様に新陳代謝を経て延命できるわけですので、制作者サイドには美味しいシステムですが。
さて、前ぶりがやたら長くなりましたが、私の住むマンションに背の高いヒョロっとしたおとなしい高校生が住んでおります。ところが先日、驚くようなアクティビティを行っているその青年を近所の地下鉄駅周辺で見て「人は見かけによらん!」と改めて考えさせられたのでした。
それは地下鉄の駅から家まで歩いて返っていたときのことでした。後ろの方からなんかどデカいボリュームで女声のポップスグループの曲を流しながら近づいてくる自転車があったので、思わず「?」と言う感じで見てみたところ、ピカピカ光る電飾を付けてアイドルの写真をペタペタ貼った状態で何らかの再生システム(恐らくスマホ)にスピーカーを接続して、大声で歌いながら近づいてくる高校生くらいの大柄な青年が乗っていたのです。
よく見ると初心者マークなども飾って付けてあったのですが、私を驚かせたのはその自転車ではなくて、その自転車を漕いでいた少年が「あの」大人しいマンションの高校生だったからでした。私としては思わず「おおおおおっ!」と思ったのですが、取り敢えず少年が戸惑うといけないかも?と思って「見ていないふり」をしてしまいました。
しかし、気分良さげに信号を渡っていく彼を見ていると「そんなこた~ど~でもええが」という感じでまさに我が道を行く風の様子。マンションに向かって夕暮れの中を戻っていくのでした。しばらくして私がマンションに着くと、自転車置き場には確かにさっき見た自転車が。その自転車の後ろに吊り下げてある写真を見ると「乃木坂46」のアイドルたちのラミネート写真でした。
「う~~~~~ん」と声にならない声を心のなかで絞り出し、あのエレベーターの箱の中で何時も恥ずかしそうに縮こまって挨拶をする恥ずかしがり屋の180センチ超えの少年の姿を思い出すにつけ「人を見かけで判断してはならん」というシンプルな事実を50年以上生きてもまだ学びきれていない己の不明を恥じたのでした。
若いというのは好きな物のためには何者をも恐れない事なんですな…。正直そんな表現者ではなかった自分から見ると若い頃に出来たことを何かやり残した感があって少々寂しいです。
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