2023年4月10日月曜日

「私には」理解できない死生観

最近「再び」患者さんの御家族と「自分には」理解できないお話をする事がありました。

90を超えているお婆さんが入院されています。残念ながら日中もベッドの上で目を瞑り話しかけても応答も出来ず、御自分でお話をする事も出来ない方です。所謂「寝たきり」のご老人なのですが、この方はある老健から送られてきた方で経口栄養が摂れなくなってきて、自己排痰が出来ない状態で時々肺炎を起こしてしまうことから治療を頼まれた方でした。

自分が勤めている病院では、今時の病院であればごく普通に行われる「万一の場合」や「終末期」の場合のInformed Consentという同意書を日常的に取得しています。病院に高齢や癌の患者としての親御さんや御兄弟が入院された方等には比較的馴染み深い書面かと思いますが、その治療法に「限界」がある場合などに「如何にしてその患者さんをお見送りするか」という方法論に関する同意書だと思って下さって良いと思います。

患者さん御自身が意思表示をされてその書類を認めることもあれば、認知能力の低下で話ができなかったり、病状が深刻でそもそもお話自体ができない場合で「連絡の取れる御親族がいる場合」等にはその書類(同意書)にその方の1人にKEY PERSONになって頂きその患者さんにとっての「万一の場面における」最良の治療の最終形態を決めていただくことになります。

主に心肺停止時の処置や栄養が経口摂取できなくなった時の栄養や水の投与経路などに関して記述してあります。

今回、その90過ぎのお婆さんの息子さんが病院に来られて、そのお母さんの「万一」に関してお話が出たのですが、万一「呼吸や心臓が停止していることが確認されたら」という時に心臓マッサージをしてください、と言う話が出てきました。その行為によって確実にそしてほぼ瞬間的に「お母さんの肋骨はほぼ全て折れてしまいますよ」と言う話をしたのですが、それでも「結構です」という返答がありました。

その返答の前後にもその行為の更に先にどのような治療行為が待っているのか念入りに説明もしたのですが…。返答に変化なしということで、その先に気管挿管、人工呼吸器への接続、更には気管切開と言う状況になっても全部やってくださいとのリクエスト。

私とこの息子さんとの死生観は全く合わないなという感想を持って書類を受け取りました。どんなに説明をしても「体が温かいお母さん」を見ておきたいとの考えのようでしたが、私とは全く死生観が異なる人種だなと正直思いました。

どちらが正しいという事は言えないのでしょう。しかし、私には絶対にない選択でした。


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