今日は訪問診療中にびっくりさせられました。
認知症の強い、ある高齢者の女性宅を訪れたときの事でした。初診でしたので、自己紹介や問診をした後に看護師さんと2人でお婆さんのベッドに近寄って診察を始めようとしたところいきなりその足元に敷かれていたシーツがいきなりブワッと盛り上がってねずみ小僧のような感じの人が出現したのでした。
看護師さんは思わず飛び退いていたのですが、私は全く喋らずにいきなりその人物の足元に置いてあったPCのモニタをジーッと見つめてスクロールし始めたその人物を見て「もしかしたら、彼はいわゆるひきこもり?」と思い、敢えてその存在を無視して淡々と診察を続けました。
恐らく彼のお母さんが今日の患者さんの娘さんだと言うことで、その更に息子さんが今日の引きこもりの青年なんだろうと思ったのですが…。診察が全て終わった後に娘さんにお別れの挨拶をして階段を降り始めたところで、ケアマネージャーさんが待機しており、私達に話しかけてきました。彼女は既にこの家族に長い間関わりを持っているとのことでしたので、今日ベッドの足元で寝ていた謎の少年のことを伺ったところ、何と既に10年以上の引きこもり状態にあるという事だと説明してくださいました。
真っ白で陽に当たっていない感じの青白く痩せた少年が、もう10年以上も社会との交流を絶ってアパートの中で暮らしているのかと思うとその心の内にあるものは如何なるものか、私には想像を絶するものだろうと思いました。それを実母への介護とともに支え続ける還暦前後のお母さんを見ていて、上と下への双方向への介護を行い二重の意味で戦っている彼女の心中も察して余りあるものがあると思いました。
「表通りからは見えない世界」に住み、私からは見えないものと戦っている人達の存在をハッキリと自分の目で見た貴重な一日でした。
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