高齢者の人達を診察していると、多くの場合「痛みとしびれ」にも話が及んできます。
無論、敢えてこちらが問診でお話を振っていくことでそういう内容を引き出すことも多いのですが、実際には入ってくるなり手足の痺れや痛みを訴える人も多いわけです。多くの人はかなりの割合でいわゆる慢性疼痛という状態であるのですが、その原因は多彩。
頚椎症、種々の理由に起因する脊柱管狭窄、変形性の腰椎症や膝関節炎、すべり症、手根管症候群などなど原因は多彩。骨粗鬆症による全身の骨の脆さが原因で椎体のあちこちに圧迫骨折が発生したりしていることも全く普通なんですが、これに対する経口投薬や注射を行うことでその進行を抑え込んだり、ブロック、貼り薬、飲み薬、塗り薬などその対応もこれまた多彩。
保険で許される限りの湿布薬を毎回持ち帰りたがる人達も結構居られますが、こちらも言われるがままに出すわけではありません。
痛みと言っても実際にはこういった変形や変性に基づくものばかりではなくて内蔵や神経の疾患からくる命に関わる深刻な疾患が後ろに控えていることも稀ならずありますので、こちらも「痛みがあるからそれを対症的に消す」という事だけを考えていると大変なことになる事がありますので慎重にならざるを得ません。整形の先生がしばらく前から出していた痛み止めの薬がいつまでも効かないし増量せざるを得ないなんてときに実は癌の骨転移がその原因だったなんて言うのは医療の世界では掃いて捨てるほどあります。
画像データや血液データをじっと診てもなかなかそのオリジンがわからない痛みというのもたくさんあって、人の体にとってあり得ないほど素晴らしい「センサー」である「痛みと体温」という2つのアウトプットのうちの一つ「痛み」だけをとっても無限にいろいろな原因があるもの。私のようなヤブ医者は本当に毎日その診断と戦っているようなものです。
爺さん婆さんになっていくと上記のような理由であちこちが痛くなっても、ご本人が「ああ、歳は取りたくねーわ。笑」とか「だましだまし死ぬまで痛みと付き合わんとあかんな」等と言って入るのを聞くと、患者さん達の長い話を聞きながら「ああ、俺もこうなるのはそう遠くないな~」等と内心で苦笑している己の存在を客観的に感じてしまうのでした。
人生、長いようで本当に短いものです。
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