2021年3月23日火曜日

変異型コロナとワクチンの効果

当初から予想されていたことではありました。

そもそも新型コロナ・ウイルスが流行り始めた頃から、基礎研究をしている人間であれば誰でも予想し、かつ当然のように出てきた変異型コロナ・ウイルス。問題はその変異がどの程度ウイルスの持つ病原性、感染力等に影響を及ぼすタイプの変異か否かということが関心事でした。

RNA virusはDNA virusと比較すればその安定性において変異(ミューテーション)が入る確率は全くレベルが違う高い変異確率になります。未だにRNAとその翻訳の安定性に関する研究というのは最先端の分子機構の研究エリアの一つ。私達が学生の頃は蛋白に複製されないmRNA以外のRNAはそもそもジャンクなどと呼ばれていましたが、それは単純に人間の側がRNAの複製機構を「全く」理解していなかっただけの話で、それ以降RNAiの研究やそれから先の安定性の研究等が出てくるにつれてRNA worldの複雑精緻なメカニズムが次々に明らかになってそれを「治療に活かす」という次のステップに入ってきたのが90年代以降。

今や癌の治療、代謝疾患、免疫疾患、レアな遺伝変異による希少疾患の治療などにもmRNAを使おうという大きなうねりがあります。そのアプリケーションの一つが今回のワクチン作成。

当然、上のようにウイルスの複製が繰り返されれば繰り返されるほど変異が導入されてくることは予想されていましたから、研究者達は既に普通の人々がオリジナル、もしくはそれに近いミューテーションで構成されたウイルスのワクチンに対する効果の壁を乗り越えてくるコロナ・ウイルスが登場するであろうこと見越したサンプル収集とその免疫原性の変異が入り込んだ表面抗原の解析に対応して更に追加のmRNAワクチンを作り始めていたわけで、モデルナなどは既にその様な発表をしています。

残念ながら直近のリサーチの一つでは現時点でのアストラゼネカのワクチンは南ア型には効果が無さそうだとか、ファイザーのものは英国型の変異には今の所大丈夫そうだとか出てきていますが、それも3rd・4thの変異が獲得され、それが感染性に影響を及ぼすような表面抗原の変異を誘導した挙げ句、更に内的な変異によって病原性に大きな影響を及ぼすような変異が入ってきたときが怖いですね。

更に病原性に変化がなくとも感染性に大きな変異があると、今までは余り感染性という意味で問題がないと言われていた子供や若年者にも拡大を見せてくる可能性があるわけで、そうなると次に来る地獄は・・・となってくるわけです。(実際に現時点のブラジル型変異はどうやら子供であっても、オリジナルよりもかなり拡大傾向が強そうだと言われているようです。)

今の政府の緊急事態宣言の早期解除は今のワクチンの配布状況を見る限り、確実に悲惨な春以降を予想させるに十分な「燻り状態=下げ止まり」を見せています。医療従事者としては大変に不気味なアイドリング時期にしか見えません。


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