2019年9月7日土曜日

安部譲二さん逝去

ショックでした。

私のブログの右側カラムの「よく読む日記」の一番下には、安部さんのウェブサイト「大人げない大人」のリンクをもう何年にもわたって貼っていました。

以前と比べて最近はコンテンツのアップデート回数が少なくなっていたし、安部さん自身のウェブを読んだところでは悪性疾患を患ったことが書いてあったので、その影響かと考えていたんですが、最終的には肺炎でお亡くなりになったようです。

まあ、お年もお年だったので肺炎は最終的には書かざるを得ない死因として書かれたものなのかもとは思いましたが、84歳と言うのは今どきまだ”惜しい”といえる年齢だと感じます。

何を書いても面白く、何を喋っても面白い。普通の人が普通に生きてきてはとても経験できないような世界と経験をその大きな体に吸い込んで、我々のような凡庸な一生を送る者達にそのエキスの一端を分け与えてくれた方でした。

ピカレスクと云う言葉は安部さんのような男のためにある言葉なんでしょうし、その彼に関してはあの三島由紀夫が小説「複雑な彼」として上梓しているほどですが、その彼も今回鬼籍に入ってしまいました。各界に幅広く友人知人を持った安部さんでしたが、一体、あの三島由紀夫に何某かの人物として書き込まれるような男ってやっぱり凄い男ですよね。

三島の本の中で彼に関して「彼の行動は男性の夢ですが、ふつうの男はとても彼のやうに、かつて気ままには、ふるまへません。だれしもわが身がかはいいので、いいかげんのところで妥協して、身をかばひます。しかし、彼はちがひます。彼はいつか自分の自由のためにつまづかなければならない。かういふふうに、男が男であるためにつまづく、といふ例は現代ではますます少なくなつてゆく。男性の女性化とは、男性の自己保全であり、なるたけ安全に生きよう、失敗しないで生きようとすることを意味します。」と書いてありますが、そんな男がどれだけこの世に残っているのでしょうか・・・。

もう一つ私にとっての安部譲二はあの山本夏彦氏の弟子としての存在でした。山本夏彦氏の書物は大量に読んだのですが、こんな人に文章指南を受け、かつ自分の子の様に愛された人物でもあったのでした。

嗚呼、本当にこんな人が消えたのかと思うと、ただただ悲しいです。
彼の死に関しては息子さんが葬儀のことを手短に記されておりました。


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