在宅の家にはペットを飼っている方がたくさんいます。
中には獣医さんのお家なんていうのもありますが、殆どの場合は個人宅の家の中や玄関先で飼われている犬や猫です。時には施設の中にみんなで愛玩犬や猫として飼われているペットもあります。由来を聞くと「いつの間にか居着いちゃった」とか、「施設長が餌をやっているうちに情が移ってそのまま」なんていう説明を聞くことも。
それでも、多くは家の中で飼われている小型愛玩犬が多く、一匹から二匹が殆どですね。時には6-7匹飼っていて、私達医療チームが伺う度に猛烈にキャンキャンと吠え続けるお家もあります。
そんなご家庭の中で、脳梗塞後に寝たきりになっているおばあちゃんの家に飼われている16歳の老柴犬がおりました。ネットで調べると、16歳の柴は人間で言う所の80歳。しかし、このワンちゃんは外で飼われていたので実際にはもう少し加齢ストレスが掛かっていたと思います。
おばあちゃんの娘さんで、この犬の飼い主である女性にお話を伺うと、ここ数年は足腰が弱くなって殆ど立てない上に眼も見えなくなって同じところをぐるぐる周り、認知症もかなり進んでいたとのこと。
更には、この夏の暑さで脱水が進んでいたようで、一旦は病院に連れて行って点滴をして持ち直したとのことでしたが、我々が来ても最近は判らないようでおむつを付けたまま暑さを避けて玄関の中に横たわっていました。
ところが・・・先日おばあちゃんの家に伺ったところ、何故か玄関が綺麗でした。
一瞬で事態を理解した私は娘さんに「もしかして・・・」と問うたところ、「今朝の夜中の二時に旅立ちました」とたった一言。
診察しなければならないおばあさんの事をしばし忘れて呆然としてしまいました。最後の様子を淡々と語ってくださったのですが、数日目から更に元気が無くなり何時何が起きるか判らなくなってきたため、一緒に玄関で添い寝していたのだそうです。そうしたら昨日の夜・・・との事。
16年もの間”家族の一員”だった柴のことは決して家族の思い出から消えることはないでしょうし、家族の一員として多くの癒やしと家族の成長の観察者として共に過ごしてくれた日々は家族の中では特別の存在だったと思います。私からは何もコメントをすることは出来ませんでした。当たり前ですが。
亡くなった犬の体は八事の火葬場に有るペット用の冷蔵庫の中に預けて、火葬を行ってもらうために2000円を払ったのだそうです。特別なお葬式やお墓などは建てず心のなかでお別れをしたとの事。
私はそれでいいと思いました。
結局、生きている間も死んだ後でも、心のなかにどれだけ相手を思うかという瞬間にだけその相手は生きていると思うのです。
だから、私にとってはとうの昔に”体は”死んだ実家のばあちゃんも、嫁さんの実家の亡くなったじいちゃんも、思い出す度に声や姿がそこにおわしますかの如く、文字通り”生きて”おります。
立派な墓や戒名を付けて後は忘れてしまうより、よっぽど心の中で何度も思い出すことのほうが大事だと私は思うのですが。
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