2019年4月20日土曜日

高齢者の認知機能検査

後期高齢者、超高齢者の認知機能検査をしていてウーンと思う事が幾つかあります。

我々が毎回のように使ったり、他院からの紹介状によく記載されている認知機能検査の代表的なものを2つ上げるとすればトップはHDS-R・長谷川式簡易認知症スケール(改定 長谷川式簡易知能評価スケール)でしょう。その次はMMSEでしょうかね。まず、HDS-Rでは
  • 自分についての見当識(年齢)
  • 時間についての見当識(年月日と曜日)
  • 場所についての見当識(ここはどこか)
  • 作業記憶(3つの単語の直後再生)
  • 作業記憶(数字の逆唱)
  • 計算(計算)
  • 近似記憶(3つの単語の遅延再生)
  • 非言語記銘(5つの物の視覚的な記銘)
  • 前頭葉機能(野菜の名前の想起)
などを大まかに見ます。実際には慣れた検査者であれば、凡そ15分前後で終了しますので、臨床家としては便利なテストなんですね。他の患者さんを診察したりしているうちに結果が得られますので。

このテストで大事なのは検査をする人自身の技能もありまして、注意力・態度・自発性・言い繕いなどもキチンと見ている事が前提になっております。その上で、被験者をやる気にさせるというモチベーションの喚起も大切。ヤル気の有り無しで結果も大きく変わってまいります。上に書いた4つの要素は実は認知機能障害者でダメージを受けた結果として変化を受ける資質だったりするんです。

満点は30点なのですが、実際には自分が出来ないという事がわかっていたり、認知機能の低下を指摘されるのが嫌でそもそもテストを受けようという気が無い人や、やる気自体を全く見せない人などの場合などキャラクターによる点数への影響も大。0-10を重度。11-19を中等度、20以下ではやはり基本的に認知機能低下を疑います。

ですから、X/30点という風に表せるのが理想なのですが、実際には曽於までは出来たとかこのテストは出来たけど全部は出来なかったというような時にはX/25とかX/22と書いた上で、補記の所に(・・・のテストは本人の意志により拒否とか、意欲を喪失しテストは中止)などという記述をつけて帰ってくるわけです。

ただし、教育のバックグラウンドが高い人は認知機能が低下する傾向にあっても、いわゆる足が付く(異常と言われる点数に到達するまでの期間)までが長くなったり、検査を受ける時に知恵を使って点数を上げるような方法を使ったりする人もいるのです。まあそれが出来るだけでも実際は知恵があると思えるのでしょうが。

もう一つの代表的な試験はMini-Mental State Examination (MMSE)ですが、これは米国発祥のものなんですね、しかし、多くの場合この2つのテスト、大変良く点数が一致しますので、ナカナカのものだなーと感心することが多いですね。
それでも、HDS-Rには野菜十種を言わせるテストが付いているのですが、自炊したりしない男性や料理に関心がない人などではここで点数が大きく削減されることが多い印象です。

臨床の場で最も驚くのはこの点数が急激に変動することでしょうか。特に超高齢者の場合は上がったり下がったりということは"非常に"良くあるのです。ただし、残念ながら多くの場合かなりコンスタントに時系列で落ちること。

たった半年程度で25/30程度の得点が13/30とか7/30等と低下することがあり、80-90前後の人達の失っていく認知機能の低下に時に愕然とすることも。

今回事故を起こした爺さんも、二年前には問題なかったということですが、運転免許証の検査では出てこなかったとしても・・・ということも十分に有り得る話で、今回の事故後はその結果がどうだったのか可能な範囲で警察は公表して欲しいものだと思います。
きっと、今後の事故から得られた教訓・注意点として各警察その他の公的施設で共有されるべき知識となるのではないかと考えます。

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