2023年3月3日金曜日

VIPに困る病棟

ご高齢の方の入院がありました。

もともと高齢になって筋力が弱ってきている上に、現代の医学では治療は不可ということでどこの病院からもストレートに「手術はできません」ときちんと説明を受けている疾患の存在がある方です。自力では歩くのが困難で頻回の転倒を繰り返されているために保存的なフォローアップを依頼されて入院となったのですが、ある条件が入院前についていました。

事務方から「ある政治的な団体のVIPの方なのでそれなりによろしくお願いします」との話。私個人は総理であろうと生保の方であろうと患者さんは患者さん。治療は「出来ることは出来るし出来ないことは出来ない」その間に差はありませんと言うスタンスで治療にあたりますが、何かを期待されたのでしょうか。

実際、自分の親が入院したらこうする以外の治療をするわけではありませんし、特別な応対もしないのですが、この方の入院がけっこう大変な波紋を呼びました。

それは病棟でのわがまま放題。実は認知症が入っている事にもよると推定される頻回のボタンコールに加え、自分が持ち込んだ携帯電話を使っての病院事務長や看護部長への呼び出し電話などが頻回で、看護業務をするナースがその対応に大わらわとなったのでした。

患者さんはいつもは会社が雇っているお手伝いさんが全ての世話を事細かに聞いて対応しているとのことで、何を言ってもその希望は概ね即座に叶えられる状況なのだそうですが、病院は限られた人数で業務を行うわけでとてもその様な願いが叶えられるはずもありませんので、その方からしてみれば「この病院はどうなっている?」となるわけです。

恐らくそういう病院というのも何処かにはあるのでしょうし、アメリカなどではワンフロア全部を使い切るようなものすごい個人用の病棟を持つVIP病棟があることも聞いています。

しかし、大変申し訳無いのですが、当院は公的保険で運営される医療法人。特定の患者さんに対する特別扱いは存在しないのです。もしそれが御所望ならば…となるのですが、それを言うのは時間の経っていない現時点では気の毒ですので、今のところ私からの発言はしていません。しかし、それでも限度と言うのは存在しますので、そのときにはご家族にありのままを話してご相談させていただこうと思っております。

病棟の日常はいろいろと大変です。


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