2023年3月15日水曜日

やってはいけない事をしてしまった看護師

夜間の頻回コールというのは認知機能の低下した患者さんの入院では「ごく普通に」発生します。

普通の病院に限らず、老健でもいわゆる頻コールと我々が呼ぶ事は毎晩毎晩日本中で発生している訳なんですが、この対応には多くの病院が頭を悩ませているのです。

例えば、実際に夜勤の看護師さんが各病棟で2人、ヘルパーさんが1人とか2人居た時に良くあるのは、たった今鳴らしたコールボタンに対応して病室に向かってみると、「眠れない」という一言。眠剤を既に使用していたりする時は余りそれに追加して何かを服用したりすることは余りありません。ところが、ナース・ステーションに戻ってきてみるともうボタンを押してまたコール。そんな事を一晩中繰り返していると看護師さんも自分の本来の仕事が出来ずにヘトヘトになってしまいます。

この様な案件に対して多くの病院や施設ではそれぞれ独自のプロトコルやノウハウを持っている訳なんですが、私が知っているある病院ではある回数を超えたコールを一回100円とか言う風に家族に請求しますよ!と通知した名古屋の有名病院もありました。まあ、言ってみれば一時間に何十回という様な「常識的な限度を超えた」コールには課金というシステムで対抗するという事なんでしょうが、これも正直、何だかな~です。

精神科病棟では逆にコール用のラインの付いたコール・システムは紐(ロープの代用)として自殺や殺人に使われるリスクが高いため「意図的に」置いてありません。

しかし、一般病棟では事情はそうではありません。(実際にそういう事をしている病院が表に目立っては出てこないだけで、存在していることは残念ながら確かなんですが…。)そういう事をする事自体が既に虐待になってしまいます。

その様な行為は当院では勿論厳禁!ところが、今回当院の看護師さんがコール・ボタンの紐を根本から外してしまうという行為を行ってしまいました。それを知ったのは翌日にその個室のお婆さんがそうされた事を我々に伝え「個室では虐待をされるかもしれないから大部屋に移してください。」と訴えた事から発覚したのでした。

もし、このお婆さんが重度認知症の方でコミュニケーションが取れない人物であったらそういう事自体が「無かった事」になってしまった可能性が高い訳です。その日既に看護師さんは家に帰宅していたのですが、私はその事実を知った時にショックを受け、直ちにおばあさんのベッド脇へ行き両手を取って謝罪しました。その時点でお婆さんはその若い看護師さんの行為を許してくれたのですが、私はそれでは終われません。

直ちにキーパーソンである息子さんの携帯番号に連絡を入れて謝罪を行おうとしたのですが、生憎お忙しかったのか電話には出られませんでした。後で聞いたところでは私が帰宅した後で病院にその方から電話が入り「うちの母の事ですから何度もボタンを押してご迷惑をおかけした事でしょう。」と逆に気遣いをお見せくさったとの話を事務員から聞きましたが、私は今回の件に本当にガックリとしてしまいました。

その看護師さんに関する個人的な論評は封印するとしても、今回の件に関しては病棟師長は勿論看護部長を始めとした面々に対応してもらい私は一歩離れた場所から以降の推移を見守ることになりました。

ただし、バック・グラウンドでは充分に意見を出しましたが。

備え万全と思っているシステムも個人の行為による崩壊は一瞬です。しかし、それでも若い人達にはたとえ失敗を重ねてでも確実に成長して欲しいものです。


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