2022年12月14日水曜日

老々介護の行き着く先は

年金目当てにミイラ化した両親や夫の死を役所に届けずに部屋の一室でそのまま放置しているというような事件が日本で多発しています。

生きていく上で困り果てた挙げ句という訳でもなく、書類上は「生きている事」にすれば何時まででも年金を受け取れるのですから悪質そのものです。しかしながら犯罪レベルとしては猿知恵クラス。いつかは露見してアウトとなる日が来るわけですが、例えば己が死んでしまえば類縁が誰もいないような人間にしてみれば、アウトとなるまでに死んでしまえば良いわけですから確信犯にしてみればやるだけとことんやってしまえという「無敵状態」になってしまうのでしょう。

他にも実際に90台の親御さんをあちこちの病院に入院させては「何が何でも生かしておいてください」とお願いする子供さんもおりますが、無理なものは無理。そんな人に心臓マッサージをして肋骨を全部折って人間の尊厳を踏みにじるような事は出来ません。

先日もバイト先の訪問診療で90代半ばのお婆さんの面倒を看ておられる軽度知的障害のある60台の男性の御家庭があり、ベッドからの転倒による大腿骨頭の骨折発生後、転がり落ちるように家庭での介護困難となった例がありましたが、同じようなことは日本中で毎日起きています。

しかし、親が90台、子が60代なんて言うのは介護の世界では普通に起きていて、老々も極まる状況があちこちで日常になっているのです。結局は悲惨な状況に陥る前にケースワーカーや他の医療従事者達が手を差し伸べて入院から施設への移送という形が一般的ですが、実はこの時点で「拒否」される方もいるのです。理由は解らないんですが、実際にこういう事はあって、家庭の中は客観的に見て「崩壊」しているとしか思えない状況で親の死までドロドロに突っ走っていくのです。

それでも訪問看護師さんの訪問や介入を許してくれれば良いのですが、そうでなければダメージは更に拡がります。

助けようとする手を払い除ける老いた親子に無力感を感じはするのですが、何も言わず荒んだ部屋で覚悟を決めて突っ込んでいく様はその汚れ具合とは反対に何だか一種「特攻隊」のような強烈な印象を受けるのでした。

こういう状況で老いた子供のほうが倒れないという保証はどこにもありません。連絡のない状態の発生、例えば先に循環器疾患のある息子が倒れて、寝たきりのお婆ちゃんがそのまま衰弱死というようなことがないわけではないのです。二人を載せた列車が「おだやかな死」という駅まで正しく突入していく短い時間が凸凹でないことを祈るばかりです。


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