2021年1月14日木曜日

新型コロナとインフルエンザ

インフルエンザとコロナの比較が行われたいろいろなpaperが次々に揃い始めています。

日本においては症例数が中国や欧米等に比べて圧倒的に違いますし、コロナにおけるRNA sequenceへの変異導入の状況によってどれほどの病原性における変異が入るのかはまだまだ研究途上ですが、それに関する各国の研究者の昼夜を違わぬアプローチが「競争」のように出てきています。

いつも我ら研究者が日常的にサーチエンジンとして使うPubMedでみてみると、Wash-U, St.Louisからの論文「BMJ. 2020 Dec 15;371:m4677. doi: 10.1136/bmj.m4677」で、ほぼ70歳に年齢を揃えたコホート研究が発表されていました。

タイトルは「Comparative evaluation of clinical manifestations and risk of death in patients admitted to hospital with covid-19 and seasonal influenza: cohort study」というそのものズバリのタイトルなんですが、結論から言うと新型コロナによる死亡率は季節性インフルエンザと比して約5倍、ベンチレーターの使用率は4倍、集中治療室の利用率は2倍以上となっています。入院の長さもインフルエンザの7日に比べ約10日。

年齢も65≧/65-75/75≦で別けてみてみると、特に65歳というのは高い高い分水嶺になっていることがわかります。更に人種間の差は白人と黒人の間では巨大!・・・ただし、これはケアに辿り着けるまでの時間の差までは考慮されていませんし、この前、黒人内科医で亡くなられた女性が黒人に対する白人との治療の質の差という「訴え」もありましたので、これが人種間の遺伝的性状の差に起因するものか否かは全く解らず、単純に病院にたどり着いたこの年令群の人々の差ということしか言えませんけども。

更に、腎臓疾患、DMの患者はやはり他の論文と同様、死亡率が高いことが明白です。驚く感じで報告はされていますが、この新型感染症がこの論文では約10%程度の確率で高血糖状態をinduceするということが書かれています。しかし、これはまだまだ慎重な検討を要するエリアで、行われた治療で書かれていな部分にステロイド等の高血糖をもたらす治療が行われていたら当然ステロイドを使う可能性のあるレベルの高血糖が導かれますから。

しかしながら、最も衝撃的なのは他の論文でも各国で続々とデータが出ていて、それをサーチエンジンで俯瞰してざっとアブストラクトを読んでみた感じではやはり基礎疾患の存在は劇的に感染者の運命に決定的に影響を及ぼしていること。心疾患、DM、高血圧、肺気腫などの存在は「アカン」と言うレベル。況やそれらがコンビネーションとして存在している方々は・・・という感じです。これらの基礎疾患の存在はインフルエンザでもやはりリスクファクターであることには変わりませんけど、よりインパクトが強そうです。

これらの論文は上に書いたように中国・欧米が中心で他には中東などが少し入ってくる感じで、医学的設備や治療法のそれぞれ異なる環境ですので、日本にそのまま当てはめるわけにはいきませんが、当初アメリカなどでの速報値から推定されていた「季節性インフルエンザ」比で1.5倍から2倍程度ではないかという死亡率予想よりも高く出てきています。

緩い制御で集団免疫を目指したスウェーデンの壮大な社会実験も大失敗しかなり軌道修正しましたし、マスクを普通にしない人間のたくさんいるアメリカも悲惨な状況。バカ大統領の率いるブラジルやそもそもマスクなど手に入りさえしない貧しい人々の多い人口の密なインドも結局のところ恐るべき感染者数が日々報告されていますが、先進国においても、社会的リソースとしての医療機関が重症者で麻痺している現況において高齢者や基礎疾患を持つ有病者は「そもそも救わない」という自分が全能の神にでもなったかのような倫理を超えたお気軽な選択をすれば楽なんでしょうが、それは今の時点では絶対にありえません。(そんな国ちょっと昔にありましたよね「第三帝国」とか呼べれてましたけど。ナチスは基本的に有名な「健康帝国」でしたが、おぞましい医学とはとても言えない実験をしつつ、「有るべき理想に沿わない」ヤバいもんは殺して埋めるとか焼くとか言う「目の前から消してなかったこととする」とんでもない選択を行った連中ですが。)

われわれ医療従事者は淡々と論文と向き合い、出てくるデータをもとに感染者への対処法を日々共有改善しながら世間の雑音に惑わされず最善を尽くすしかありません。三次救急を含む近隣の大きな病院のうめき声を聞いていると、少なくとも我々医療従事者はとても会食や旅行にはいけません。人には言っておいて会食をする永田町や田舎の議員等のバカ共も沢山いますが、奴らは奴ら。関係ありません。

日本も高齢者と基礎疾患を持つ人達は「特に」気をつけていく必要があることは歴然ですね。科学の力をもって作られた各種新型ワクチンという銀の弾丸の登場がもう暫くしたらこれらの火を沈静化させることを願う最近の私です。


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