2020年12月21日月曜日

普通は起こらない?そんなミスが重なることで普通に「最悪の事態」が起きます。

今回の爪白癬(いわゆる水虫)の優秀な治療薬イトラコナゾールに眠剤が混ざったという訳のわからないほどのとんでもない事件は間違いなく我が国の薬害史に名を残す悲劇となりました。

小林化工というのは調べてみるとジェネリック製薬会社の有名所の一つと考えて良いでしょう。我々がジェネリックを処方する際に多くの薬で最後に「MEEK」と付く会社のものを使っている事には気づいていたのですが、それが小林化工のものだということはこの事件が起きるまでは知りませんでした。他にもよくあるのは「サワイ」「アメル」「トーワ」などですが、明らかにMEEKは有名所の一つ。

残念なことにイトラコナゾールというのは水虫の治療薬としては素晴らしく効果のある薬でして、塗っただけでは治りきらない水虫もこれを経口的に長期服薬することでほぼ完全に治療することが出来るのです。いい時代になったもんです。

ところが問題はこの「高い倫理観と技術」を持っているはずのこういう医薬品の会社が「普段は起こらない」ハズのミスと手順違反が次々と重なっていたという説明。ありえないのはそもそも継ぎ足し作業そのものであり、継ぎ足したものが間違ったというのは間違いの上に間違いが重なっていることになります。

薬剤の工場搬入でも2人の人間によるダブル・チェックがなされていなかったし、バーコードによる間違いを減らず薬品管理もそもそも存在せず、最終的に行われていた品質検査でも異物混入が示されていたにもかかわらずそれも見過ごされていたという。

こういった事はマニュアルの不備も去りながら、マニュアルがあってもそれを無視し続ける現場の人間も普通にいるということです。こういった事は過去にもJCO臨界事故、病院における眼球や乳房の左右取り違え事故などで限りなく繰り返されています。間違いの起こらないシステムや人間の作業というのはありません。

しかし、それらがこと人命に関わる作業である場合、可能な限りではなく「絶対」を求めるレベルで安全性を追求することが我々の基本姿勢でなければなりません。首脳陣がビデオカメラの前で揃って90度頭を下げて、被害者へ保証金を払って、国から業務停止と改善命令を受けて終わりというのはもう結構です。

今回の事故を受けて「実は」肝を冷やしている他の製薬会社は他にも多いのではないかと私は一人思っております。「他山の石、以て玉を攻むべし」まさに今回の件でしょう。


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