数ある疾患の中でも専門性とその理解の難しさという意味では血液疾患に勝るものはなかなかないと感じます。
血液疾患というのは「ある程度」までは疾患の内容を字面の上からは暗記することは出来ますが、他の疾患というのは消化器や神経にしても、やはり「ある程度」までは深みを持って理解することが出来ます。ところが、血液とその他の疾患では「ある程度」のレベルが違うと考えます。
血液疾患の研究においては多くの優秀な人材が集まり(研究志向の強い人材!?)各種の優れた遺伝子その他の研究が進められてきました。日本の血液研究は世界でもトップクラスと言えるレベルで、東大や名古屋等が総本山を目指して研究に邁進してきた歴史があります。
私が学部の学生だった頃などは21世紀の現況と比べると、本当にまだまだ未成熟と言えるものでしたが、解析手段の劇的な進歩は血液学に多くの恵みをもたらしてきました。一昔前であれば「思考実験」レベルのものであった解析法が現実に眼の前に出現するとともに、レファレンスとしてのヒトゲノムが眼の前で日常的に使えるようになり、タンパクの解析手段も劇的に進化するとともに、解析の速度の劇的向上は昨日までは夢想でしかなかった方法論を用いて試行錯誤を可能にしてきました。
また、解析結果の解釈に関しても比較や解析が高度なレベルで「容易に」行われることとなるとともに、AIを用いた思考実験を通しての分子間相互作用が超高速で行われ、昔はSF映画でしか出てこなかった推論と莫大な超高速演算による分子間相互作用の解析結果としての新薬候補の設計とスクリーニングが出来るようになってくるという世界の登場が眼の前にあります。
私が学生だったときの血液疾患の情報量を1とすれば、現在の血液学の情報量というのはその100倍は優にあるのではないかと思ったりします。当時は全く手も付けられなかったような血液疾患が今では普通に治ったりという時代ですが、これから更に経口服薬等で血液疾患が治療される時代になってくるのでしょう。
それでも未だまだ治療できない疾患も多々あります。血液の専門家に血液疾患のことを聞いてももちろん我々とは比べるべくもない深く広い知識を以て専門的アドバイスを下さるのですが、そういった先生にしても「今は中でもいろいろと専門エリアが深く広く別れていて我々の中でさえも其々の専門家に質問をするのです」とのこと。宜なるかなです。
そう考えると、我々一般内科医の見つめる血液疾患の理解などというものは極めて皮相なものなのですが、血液の専門家が内蔵をどれだけ見れるか、呼吸器は?という時代ですのでお互いの専門性を尊重して助け合うしか医学の進歩は無いと感じます。
先日久しぶりに血液専門の先生に伺って理解することがたくさんあり、意外と自分が研究していたエリアの分子が次々と疾患のパスウェイに登場することに個人的に納得する次第でした。
何歳になろうと勉強は大事だし楽しいです!
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