2020年7月24日金曜日

認知症の患者さん失踪

夕方の申し送り時に事件が起こりました。

80過ぎの可愛らしい認知症のお爺さんがこれから夕食を食べましょうという時に居なくなったことに主任さんが気づきました。20分ほど病棟の看護師さん達だけで探したようですが、その第一段階で見つからなかった為、当直室で休憩していた私に「お爺さんが失踪」した旨のコールが入りました。

椅子からガバッと立ち上がって白衣を羽織って捜索開始です。先ずは当直司令を呼んで失踪した患者さんの名前と年齢、特徴その他を伝達。各病棟から一人ずつ看護師さんを呼んでもらって捜索隊の結成です。

その間に8つ有るビデオの録画チャンネルを操作して予想される失踪時間帯の最大限の幅を設定して10倍速で人の出入りをチェックしていきました。2つの出入り口、4つのエレベーターなどをチェックしましたが何れにも「らしき人物」は映っていませんでした。

という訳で、最も疑われたのは「院内のどこか」に未だ居るのではないかというもの。そして次の可能性は何らかの方法でどこかからこっそりと上手に出てしまい近隣のどこかを徘徊しているかもしれないというもの。

その場で二人組の捜索隊を4つ作るともに、残りの足の強そうな若い二人には病院の周辺を時計回りと反時計回りに向こう三本の小路まで含めて半径300m程度まで探してくださいとお願い。

4つのチームにはA病棟の各階を便所の各小部屋まで含めて全て開けてみて貰うように依頼するとともに各階の各病棟には迷入したお爺さんが紛れ込んでいないかチェックして報告してもらう事にしました。無論、踊り場や階段も全てチェック。しかし、A病棟にはどこにも居なさそうです。

そこでB病棟に移動。地下も含めて使用されていない部屋も同じ二人組のチームで調べ上げていきました。すると・・・地下2階にあるオペ室の扉の中にある椅子の上にちょこんと座っているお爺さんを当直司令が発見。

全館放送で手短に「見つかりました」の文言を流してもらい皆が一安心。外の捜索隊も還ってきてお爺さんの無事発見を共に喜んだのでした。

もしお爺さんが外で徘徊していたりしている時に事故にでも遭ったりしたらそれこそ取り返しのつかない事態です。悔やんでも謝っても取り返しのつかない事態。病院の信用にも関わります。認知症がなくて自分の縊死で病院を出ていく人は年に1人、2人居りますがそれとこれとは全く別次元の話。

取り敢えずは無事これ何よりでしたが、今後もう一度対策を練り直さねばなりません。何れにしても緊張とその寛解の連続した一時間でした。はっきり言ってあんまり経験したくないことですね・・・。

お爺さんに「散歩でもしようと思ってましたか?」とお話したらニッコリと微笑んで「まあね」と一言。1人だけで遅い夕食を食べていただきました。


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