2020年7月25日土曜日

京都ALS嘱託殺人に思うこと

ALSを患う51歳の女性が、SNSを通じて2人の医師と連絡を取り、体が思うように動かせない状況の自分を安楽死させてほしいという依頼、実際に医師達が実行したというもの。

そこにやってきたのが主治医でもない42歳と43歳の2名の男性医師。仙台に住む元厚労省技官の精神科医と東京のインポ治療医院の院長という記述がネットに流れていますが、そもそも主治医じゃない人間がひょこひょこと患者さんの所に行って100万以上の金銭授受を伴いながら胃瘻経由で致死性の薬物を投入するとか有り得ないです。

安楽死の議論に関しては私達の世界では積極的なものと消極的なものの2種類があり、そこに至る前に癌などであればその疼痛への種々の緩和ケアがあり、上手に投薬でのコントロールを行えば、殆ど痛みを殆ど感じること無く患者さんの疼痛を文字通り「緩和」してその命が尽きる瞬間まで寄り添うことが出来ます。

今回の件の先行事件のようなものとなりますが、95年の東海大学安楽死事件以来判例の基準として設定されたのは以下の4つ。(この件の場合は見守る家族による強い要請に従い続けて行われた行為に対する判決)
  • 患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること 
  • 患者は死が避けられず、その死期が迫っていること 
  • 患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに代替手段がないこと 
  • 生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること
しかし、今回の案件の場合、少なくとも上から二つ目は確実にノー。上から3つ目に関しても明らかに代替手段がないとは言い切れない、しかも手は全く尽くしていない!という点で「とても」医師としてそのような行為には踏み切れません。

倫理委員会のような第三者による客観的な議論もなく明文化された契約書もなく、いきなり患者さんとの直のやり取りだけで「例え本人の強い要請があったとしても!」人の心臓の拍動を停止させるとか絶対にあってはならない事だと思います。

二人は全能の神様にでもなったつもりだったんでしょうか。人の命の大切さに関して大きな錯誤があるとしか思えません。

偽物のドクター・キリコがまた安楽死に関する大切な議論の機会を失ってしまったとしか思えません。無論、今回の件は少なくとも日本における安楽死の要件には全く当てはまらないと考えます。

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