2024年5月31日金曜日

ワイン飲んで寛ごうとしていたら…

連日の濫読とネトフリ視聴で疲れていたため、夕食後に7時過ぎ位から眠くなってきている所でした。

8時直前だったでしょうか、電話が鳴っているのに気づいて画面を見てみると病院から。サクッと電話をピックアップして会話を始めると、師長の切羽詰まった声で「先生窒息です。当直の先生が未だみえてなくて!」との説明。

取り敢えず別の先生の指示で大量の酸素を投与して何とか60-80%程度の酸素飽和度を示しているとの報告でしたが、実際の酸素飽和度は恐らく5割に届いていないのは確実なレベルの数値です。(ボーアの乖離曲線というのがありまして…)

このままでは脳や体組織に絶大なダメージが降りかかって確実に逝ってしまいます。電話で状況の遣り取りをしてみるとどうやら家族はDNARという事で万一の際には何もしないとなっているようですが、これは明らかに窒息という事故ですからレスキューの試みは必要と判断し、病院へ直行です。

その途上でも話を続けると、内科の当直ドクターが来ていないばかりか来ている精神科のドクターは高齢で、この手の事は何もできない人で、勿論、マギール鉗子や喉頭鏡などを使い気道の異物を取り除くなどという事は全く期待できません。

病院には10分弱で到着してナース・ステーションに飛び込むと、その爺さん先生は背中を丸めてただポツンと椅子に座っているだけ。何の仕事もしていません。直ぐに看護師さんに案内してもらうとモニタが付いた状態で血圧は表示されず、酸素飽和度は50%程度を切りそうで、表示が途切れがち、更に心拍数は30を切っていてまさに「天に召される5分前」状態。

直ぐにラテックスのゴムを手に嵌めて喉頭鏡で喉を観察すると、ピンポン玉のようなものが気道の入り口をどっかり塞いでいるのが確認できました。マギールでそっと掴むとかなり柔らかい表面を持った物体が触れて、それをゆっくり摘まみ出すと巨大な肉片が…。

合計4個のチキンの塊が取り出され、最大のものは5x3.5x1センチのサイズ!これでは気道も全く塞がれてしまいます。恐らく極僅かな隙間からエアが入ってくれていたため、死には至らなかったのだとは思いますが、それでももう死亡直前の状況でした。

除去後は急激に心拍数が上昇し120程度に。血圧も酸素飽和度もガッと戻りましたが、呼吸状態は不安定、かつ対光反射も減弱しており、脳がダメージを受けている可能性が大でしたので、今晩一晩の事を考え気管挿管にて呼吸管理を行った状態で点滴を開始しました。

血圧が低下し始めたので、そのコントロールを行いながら導尿も開始。遠くに住んでおられる家族に連絡を行って状態を報告、その頃にやっと着いていた当直医に話を継いで帰宅しました。明日までにどうなっているか。戻ってくれると良いのですが…。

それにしても…大学の先生はカンファレンスなんかで遅くなる事が多いので、常勤医の滞在時間と当直医の到着時間の差を考慮しないとこんな事が起きると前々から言っていた事がまさに現実に起こってしまいました。

情けない話です。

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