2022年11月7日月曜日

ロシアの科学の死

BBCで「ロシアの科学は死んだ」というタイトルでのニュースが流されました。

ロシアの科学と言えば、私の認識としては歴史的に数学と物理学が突出して世界レベルの人物達が輩出され続けているイメージです。それこそ綺羅星の如きレベルで世界に影響を与えたレベルの科学者達と言う感じ。

ところが、今のロシアでは大勢の科学者が既に国を脱出していると大学の教員自身が言っていますし、その大学の先生も「2月24日以来ロシアの科学は死んだ」と公言して憚りません。実際のところ、戦争批判を通じた政府批判を行った教職に就く人間達は次々に解職されているとの事。辞めさせられていく後ろ姿を見送りをする学生達はその意味を十分に理解しています。

そして、その学生達は今現在「もしかすると」招集される側になるかもしれないという恐怖と戦わなければなりません。科学が無くなった国家の終末像がどうなるのかというのは第二次世界大戦のナチス・ドイツを見ていれば容易に理解できます。ドイツ科学界を支えていた著名なユダヤ人科学者達が退去して国外、最終的にその多くはアメリカに逃れ、徹底的にナチス・ドイツに敵対しました。(まあその最後の矛先は日本になってしまった訳ですが。)

現代数学の父と言われるヒルベルトは、ナチス台頭後のゲッティンゲン大学で人に問われた時「ドイツの何処に数学が残っているというのだ?」と逆に問いかけたといいます。恐らく同じことが今のロシアにも起きているのではないかと想像するのですが、何処まで進んでいるのか。

何れにしてもこの戦争が長引けば長引くほど、ロシア国外で十分に通用するレベルの科学者であればあるほど、国外では引く手数多と思われますのでロシアの自然科学は経時的にシュリンクしていくものと思われます。更にロシアの科学にとって不味いと思われるのは、指導者クラスが流出することで、その下についてきた若手達が力を伸ばせなくなることではないでしょうか。

何れにしても今回の戦争はロシアの科学者達の運命をも大きく変えていきそうです。


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