2022年6月23日木曜日

ボケない人はやっぱり全くボケない

私の病棟には多くの高齢者、超高齢者が入院してこられます。

80代なんて言うのは70代とともに患者数という意味ではボリューム・ゾーンで、園周辺に60代と90代の方々がやってくるというイメージです。それにしても、毎日のように思うのはこの世代の健康状態というのは若かった頃の「勢い」というものがザクッと削られがちになってしまう年齢。

例えば20年くらい前までは現場や会社でバリバリに筋肉系の仕事をしていたオジサンもお爺さんになって筋肉が衰えて頭の働きが衰えて、以前の勢いというものが全くなくなってしまう人が全く普通です。ユンボで毎日仕事をしていた人、巨大なガントリー・クレーンのオペレーター、首都高速を造っていたオジサン等、一昔前から日本の基礎を造ってきた昭和の人々が今その人生での役割を終えてベッドの上に横たわり始めている時期なのです。

それでも、頭脳の方はというと話は別。これは体力とは全く別物の世界です。

今日も「脚の怪我」がもとで動けなくなってリハビリを希望されて当院に入院してこられた紹介の女性患者さんが来られましたが、今回はこのおばあさんに驚かされてばかりでした。

御年92なのですが、全くもって頭脳に衰えの片鱗も見えないのです。足の痛みのために動きは悪いのですが、こちらの話に当意即妙に合わせて冗談を言ってきますし、周囲の状況に関しても全く時勢にあった正しい認識を示されます。時事問題も取りこぼし無く着いてこられる上に。大昔のことも昨日のように思い出されるのです。

大デブだったという自分の父親の話や、自分に対して「早くボケろ!」と息子に言われたんよ~等と笑いながら言われると云うような事を面白可笑しく話されます。そういうお婆ちゃんの話に逆にこちらが癒やされる次第でしたが、そのお婆ちゃんの話をずっと聞いていると「私はボケるってどういうことか解らないのよ~」等と真顔で話をされます。

80代前半程度の人がこういう事を言っても、ワタシ的には内心「未だ数年後はわからんですよ!」と言う感じなのですが、90代になっても滔々と淀みなくお話をされるこんなおばあちゃんを見ていると「おそらく頭部の単純CTを撮っても海馬の萎縮や皮質全体の萎縮が殆ど見られないような特別な人だろうな~」と推測してしまうのです。

自分も「もし嫌でも長生きするのなら」こういった高齢者になりたいと思うのですが、まあ、無理ですな。w 宝くじの「当たり籤」に当選したような遺伝的背景と生活背景が必要でしょうし。

これで90代で「これほどの頭脳」を見せつけられたのは2回目。恐ろしい90代というのはいるものです。車いすでの生活になろうと頭脳の力で空を駆け巡ることが出来るのだなと改めて感じた今日の入院受け容れでした。


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