2021年9月15日水曜日

精神科の新型コロナ感染患者と差別

「やっと」日本精神科病院協会(日精協)から声明が出されました。

日本中の各精神科病棟を持つ病院(主に精神科病院と言われるところ)からの発出自体の遅いアンケート結果の集計を受けて集まった回答が公開されるとともに、マスコミの耳目も集まった一日となりました。
令和3年8月23日時点において感染者が発生した会員病院は310病院、総感染者数は5,091名(患者3,602名・職員1,489名)、そのうち感染者が5名以上の病院は120病院でした。当協会としては新型コロナウイルス感染症の発生当初より、精神科病院でコロナ陽性者が発生した場合には精神疾患の治療に特化している精神科病院では感染症に対する専門的な治療には限界があり、速やかに転院出来るようかねてより要望してまいりました。しかしながら、今回の調査では精神科病院が転院を要請しても転院できず死亡された方が200(正確には235!)名を超えていることが判明し、極めて由々しき事態であると認識しております。

また、調査時点でのワクチン接種については、70%の入院患者が既に2回接種を終えていましたが、65歳以上の83%に対し、65歳未満では54%と接種率は低く、接種が進んでいない状況です。その背景にはワクチン供給量が足りない、精神疾患で入院する患者について精神症状によりワクチン接種の同意を得ることや、ワクチン接種券が自宅に送付され回収が困難など様々な意見が寄せられています。
上の発表を見ると、まさに日本における精神科医療の日々の現実そのままの実態が「トップからの報告」として反映されていて、日常の中で我々の院内に流れてくる種々の断片的な情報が実際に間違いなかったんだということが最終的に数字と文言で確かめられた瞬間でした。

今回の院内における「誰かの持ち込み<勿論誰かは不明」によるコロナ禍と患者さん達の死亡は上記の如くワクチン接種が始まった後のインシデントではなく、ワクチンが手に入る前の出来事でしたから、単純に最近のインシデントとは比較できませんがどこにも出て行くことが無い精神科の患者さん達が好むと好まざるに関わらず治療行為においては「差別」されてしまうという事実は本当のことです。

他の病院してみれば、精神科の患者さんが言うことを聞かずに点滴を抜去したり、あるきまわって感染を拡げたりというイメージが強いのだと思います。しかも、最後の方で書かれているように精神症状によりワクチン接種の同意を得ることや、本⼈は同意能⼒なく、ご家族へ確認するが連絡が取れず同意を得ることが困難。他にも成年後⾒⼈からの同意がとれない。⾝寄りのいない認知症患者からの同意を得る事ができない。ワクチン接種券が自宅に送付され回収が困難などというのも実に日常のリアルです。

この診療格差が患者さんの死亡率を上げているという日常を精神科に常勤として働く我々少数の内科医は日常的に診ておりますので、声がどこにも届けられず精神的につらい日々を送らざるを得ない日々でした。

こういったトップの発言が少しでも巷間に伝わってくれればナ、、、などと今も夢想するのです。

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