2020年4月13日月曜日

コロナのPCR検査で起き得るいろんな間違い・失敗

先日もアメリカの友人が抗体を利用した素晴らしいコロナ検査キットを作成したという話を書きました。

しかし、巷で確かな感染を確かめるために今現在最も使用されている方法はPCRによる検査法。皆さんの中にはきっとテレビの解説などでその内容のあらましを知ったり、ネットでその中身について治験を得た方も居ることと思います。
おまけに、最近の高校生物ではPCRのことを当たり前のように教えているようで、「なるほど時代は変わったなー」と感心しきりです。(とはいえアメリカの娘達も実技を含めて普通に授業で習ってたのでそんなもんですよね。)

では実際に我々が実験室でこういった実験を行って何かの遺伝子を増やしたり、ある部分のシークエンスを増幅したりする時に、頭の中だけで想像するだけでなく、実際に検体から何らかの遺伝物質を検出するような「ウェット・ラボ」での実務では本当にいろんな事が起きます。

ですから検査を行ったいろいろな機関で検体をスクリーニングした時に陽性や陰性という判定が出たり、陰性だったものが陽性に出たり、またその逆があったりなどという話を聞いてもまず全く驚きません。方法論の実務的内容を知らない方などはニュースなどを見ては「またいい加減なことをやってるんじゃないか!」等と考える方もおられるかと思いますが、実はそんな事が起きるのはいろんな実験で比較的良くあることなんです。

良くわからないかもしれませんが、検査用に選択したしたPCR用のプライマーのシークエンスと脱塩や純化レベルの差、セットアップしたアニーリング・エクステンション・ディソシエーションのコンディション・セッティング、そしてThermal CyclerともいうPCRマシン自体の温度追従性の差、そしてマシンの中央にある96穴の各wellの個体差などがまず出てきます。

更には検査をする時の手技の差というのも物凄く大きく、プロトコール通りにやっていても、使ったパイペット・チップが気づかないうちにwater bottleなどにごくわずかでもエアロゾルなどを飛ばしていたらPCRの原理上、それ以降の実験はもうメチャクチャです。

また、実験者自身がコロナの陽性だったり検体を採取した時に採取者がその方法論を誤っていたら、それ以降の検査の陽性や陰性は全て怪しいものになってしまいます。特にこの検体採取の方法論、実にクリティカルなんですがあんまり簡単じゃないんですよね・・・。

上に書いたように本当に種々の要因で陰性・陽性が出てきますので、ニュースで出てきた結果はあくまで「正しく行われた採取方法によって、正しい方法で行われた」という前提での陽性陰性となるわけです。

たったこれだけのことなんですが、少しは皆様のお役に立てれば、現場ではきっといろいろと起きているであろう事がご理解いただけるだけで何よりです。


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