2019年6月20日木曜日

どこまでもフリーダム!

時々なのですが、役所からの依頼でホームレスの人達のレスキューを頼まれることもあります。

良くあるのは寒い時期、暑い時期になってそれぞれの季節に有り勝ちな疾患で倒れてしまったホームレスの患者さんに対するレスキューの依頼。これは、三次救急でも良くある話ですが、それらの高度救命救急で”ひとまずは大丈夫”と判断された人達が通常の生活に戻るまでの暫くの間、体調管理をし続け、今回倒れた原因になった疾患に関連した数値をモニタリングしながら正常化が確認されたら次に移行できる施設などを探してあげるというものです。

次に多いのが長年にわたって、それこそ十年二十年もの間、何も健康診断なしで生活されてきた人の検査入院を依頼されることでしょうか。
こちらのケースの場合はまさに健康診断・スクリーニングのために入院することで、その人達に潜在している可能性のある疾患が悪化する前に予防的に治療していく手助けをするというものです。

実際はこちらの方々の検査入院というのは非常に気を使います。役所から依頼されたホームレスの人達の中には何十年にもわたる野宿生活にもかかわらず全く元気ピンピンのターザンみたいな人たちも沢山いるのですが、比較的シリアスな疾患を持たれている人達も稀ならず。

一次スクリーニングで一番気をつけなければいけないのはまず結核などの感染性疾患。次に腫瘍性病変と代謝性疾患でしょうか。無論他の疾患も無数にあるのですが、感染性疾患の場合は入院イコールその感染源の保持者としての患者さんのケアの開始ですから、実際には、例えば結核などが見つかったら保健所等との連絡を密に取りながら緊張した状況でintensiveな(少なくとも一時的には)個室管理を強いられることになります。

そういう人達の疾患を発見しながら治療するというのは前医からの紹介も何もなしで 、まずその人にケアすべき疾患があるのか、そして次にあるとしたらその疾病は何なのか、その次に来るのはそれらの診断に誤りがないとしてどう治療すべきかという、まさに診断学治療学の実地演習を繰り返し繰り返しやるようなもので、毎度の事ではありますが、繰り返し自分の脳味噌を推理の迷路からの脱出劇に追い込んでいくことになります。

実際、そうやって最終的に治っていく患者さんを見るのは医者冥利に尽きるのですが、そんな患者さんの中には医療機関の中に長期閉じ込められるのが嫌で嫌でたまらない人達がかなりの割合でいるのです。

長年にわたって公園や野原、ビルの谷間で生き延びてきた人達の中には一日三度のリズム自体が体に合わないという人々がいるのです。その人達の中には突然治療途中の病院から逃げ脱す人々が稀ならず居るのです・・・。まさに自由を求めて命は顧みず。

そして数年してまさに瀕死の状態で病院に担ぎ込まれてくることも・・・。
自由に自分の生活を御してリズムを作り、誰にも迷惑をかけず、お世話にならずに生きてきた人達に我々の考える”普通のリズム”を押し付けることは時には非常に無理な話だということなのでしょうね。

常識と善意の押しつけは時にある人々にとっては迷惑なものなのです。

0 件のコメント: