2025年2月12日水曜日

勝手に医者の処方を変更する人達

世の中は本当にいろんな人達が居ます。

実は今日訪問診療で行った御家庭の「患者さんのご主人」もそういう少し変わった人達の中の一人です。この方の変わったところというのは自分の主張を自分で拡大解釈してそれを実行してしまう事なんです。 

例えば、私達医療者サイドにこのおじさんが言うには「先生、うちの嫁さんはいつも抗生物質を使っている時だけバルーンのオシッコが奇麗になって詰まらないんです。ですから毎日抗生物質を毎日使い続けるようにしてください!」という様なとんでもない話を強く主張してきます。

それがどんな顛末を生み出すのかという恐ろしい話を易しい例えで説明を繰り返してあげるのですが、自分の考えを全く変える気が有りません。このオジサン、実は前の医療グループとも揉め事を起こして縁を切られている問題のある人物。我々としてもいわゆる「困った人物」という認識は持っていたのですが、こんな感じで問題を起こすとは思いもよりませんでした。

そして問題はこれだけに止まりませんでした。実はこの次に起きた問題のほうが遥かに深刻でヤバかった。

パーキンソン病の治療に使うL-dopaという非常にクリティカルな薬を患者さんに投与し続けていたのですが、このお薬を「勝手に」抜いて捨てていたのでした。これが発覚したのは処方をしようとした時。

「先生、このお薬は歩いていた時にあの大きな病院で処方されていた薬ですので、ベッドに入ってしまうようになってからは私、勝手に抜いて捨ててました」という、実に馬鹿正直な、というか驚くべき行為を行っていたのでした。

余りの事に私は言葉を失ってしまい、同時に最近寝たきりの患者さんの動きが急激に悪化していた理由が即座に理解できたのでした。前回の抗生物質処方依頼事件の時には易しい解説を付けて、その非を説きましたが、今回は余りの事に絶句。一旦病院に帰って訪問診療の医局長に事の顛末を説明すると、「直ちに電話させて頂きます」との事。

暫くして戻ってくると、一言「先生、次回もしわれわれのいう事を聞き入れて下さらないようであれば、即座に終診として下さって結構です。我々の医療行為が受け容れられずに万一の事が発生した時には責任問題になりますから」とのお話。

取り敢えず先方のオジサンからは謝罪が入り、今回だけは不問としましたが、恐らく近未来には何かが起きそうな嫌な予感がしないでも無いのでした。


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