2018年11月30日金曜日

「ルポ西成」を読んでみた

「78日間ドヤ街生活」という副題がついた本「ルポ西成」を読んでみました。
見えているのは有名な三角公園ですね。
診療をする上で、患者さんの中に居るドヤ街出身の人、不定生活者の人々の背景にあるものを少しでもリアルに感じ、実情を知るためにこの手のルポルタージュ本はよく読みます。

実際に國友公司という筑波大学卒(7年かけて卒業!)のライターが実体験をもとに自分があの西成で体験したオイオイというような数多くの「普通の人が普段は目にしない」西成での出来事と人間模様を時系列に沿って内側から見た本人の視線で書き込んでいます。
しかし、全体的な感想を最初に言ってしまうとやっぱなんと言うんですかかなりのレベルの事が書き込んはあるにしても、ここが知りたいという核心の部分の詰めが甘い!

結局、書くとヤバイ内容もそこを描いてこそのルポになると思うんですが、あと一歩の踏み込みが足りない状態での記述が続いてしまうんですねえ。寸止め感強し。
まあこれ以上踏み込むと確かに命の危険というものが有り得るだろうなという部分があるのは理解できるんです。それでも、その一線を越えた部分の報告(ルポ)が欲しかった。

読んでいて理解できるのは、「ああ、この部分間違いなく國友さんは知っている部分がなんだろうけど濁してるな」と思える部分が多いこと。
日常のディティールの記述の中に間違いなく“隠している”と思える箇所が散見されるところに強いフラストレーションを覚えました。

文体も平明で大変読み易いし、探ろう、読者に見せようという視点も全然悪くはないのですが、ツッコミが足りないという感じがどうしても拭えない。面白いのは間違いないのに〜と思いつつ、もっと読みたい知りたいという気持ちが私の中から溢れてきます。

原稿用紙の指定長などの制限があってこういうサイズになったのかもしれませんが、私としては活字を1ポイントか2ポイント小さくしてでも、内容量をもっと増やして欲しいと思いました。

書き込みを数倍にすればメイヒューの歴史的名著「ヴィクトリア時代 ロンドン路地裏の生活誌」のように化けないとも限らないと思うんですが、如何でしょう。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

(とくめい) 濁した表現が多いのはやむを得ません。
この方が、本名かペンネームかはともかく本の内容に
より、取材した西成住民に特定されるとか彼らに不快
感を与え過ぎると、次回に西成で過ごそうとした時の
キツイ又は緩い報復や排除を、どうしても避けたいの
でしょう。 自堕落に気分展開するには、バンコクや
プノンペンへ行くより手軽ですし・・。

small G さんのコメント...

確かに相手のことや次回以降のことを考えるとそうなるんでしょうか。
バンコクとかプノンペン・・・。
何だかそっちの方の闇は西成のX倍という感じなんでしょうね。
行ったことありませんが、東南アジアのスラムも何だか激ヤバ感満載。
人の臓器とか普通に取引されてそうだし。
行くことはないと思いますが。w

匿名 さんのコメント...

気分展開 → 気分転換(お恥かしい・・)

バンコク(80-90年代)
日本人や日本社会みたいに、減点主義や完璧
指向でなくても、立派に社会や経済がまわっ
って行くんだと実感させられた国。 勿論
行政・政治・軍人の腐敗は承知の上。

プノンペン
90年代は、最低レベルの日本人とヤクザの
天国だったらしいです。 オレが行ったの
は21世紀になってからですが・・。 宿泊
費用と、日本を始めとした諸外国のビール
無税で、アル中の俺には天国。
 更に、フランス植民地の過去のために最
貧国のわりに、欧州の方がオシャレな バー
レストラン ベーカリーを開店していて異
常にハイレベル。 しかし、10~20年で普
通のつまらないアジアの国になると予想。
バ ン コ ク みたいにね。

small G さんのコメント...

何かメチャクチャ詳しくないですか!?w
一般に言うところの”沈んでいた経験”というのとはまた違うのでしょうが、十二分に現地の状況を把握されるレベルの滞在経験はお有りのようで羨ましいです。

そう言えば今日の外来でタイに始終遊びに行っていた方のお話が出たんですが、なんか昔と違って商業主義が全面に出てきて面白くなくなったし、もうやめようかなって言うのを聞いたばかりでした。

発展前とか発展途上に独特の雰囲気を持った国々も近代化してしまったら面白くもなんともない国になるってパターンが多いんでしょうね〜。