2024年6月9日日曜日

手練れの物書き

世の中には凄い書き手がいることを改めて知りました。

そもそもこの人を何から知ったのか今でははっきり思い出せないのですが、ネットでアマゾンの何かの書評を読んでいたときにそれに関連付けられてページのずっと下にヒョコッと出てきた位の感じだったと思います。

しかし、何らかの理由で「みかづき」という本が高評価を受けているのを見てその内容に関する短い記述を読んで見ました。すると2017年の本屋大賞第二位と書かれているではないですか。

読んで面白いという意味では芥川賞や直木賞などよりも私はこの賞の方をよっぽど信頼していますので、その年の1位や2位というのはかなり信頼の置ける評価を受けていると考えて良い本。しかし、私は恥ずかしながらノンフィクションにかなり寄った読書をする人間なのでこの「森絵都」という作家さんを存じ上げませんでした。

自分がアメリカにいる頃に日本で盛り上がったいろいろな音楽、本、出来事を知らないままで過ごしていましたので、人生の中で抜けている大事なオブジェクトというものがあっても全く不思議ではありません。

そして、この本の中古が一部安く売られていたのでオーダーしたのです。家に到着したのは親父が倒れる前のこと。しかし、何の前提条件も無しに読み始めたらまさにpage turner状態でして、全く読み止めることができません。

親父のことで一旦宮崎に飛んでいろいろと仕事をする間は本を手にする暇もなかったのですが、名古屋に帰ってきてからは深沢七郎の種々の著作を脇に置いておいてでも読みたくて仕方ない状態。

これほどまでに自分の読書意欲を掻き立てる小説というのは浪人が決まった時に読んだ吉川英治の宮本武蔵以来です。

ネタバレになるので例の如く中身に関しては一切書きませんが、人を惹き付ける魅惑的な内容構成が私の生きてきた時代にビシッと重なっていることもありますが、登場させている人物達のキャラクターの肉付けの巧みさとその交差のさせ方が、ただただ絶妙過ぎて感心するしかありませんでした。

世の中にはこんなに文章を書くのが上手い人がいるんだという溜息しか出ないという状態。もちろん、陰で物凄い努力もされているということは想像に難くないのですが、それを認めたとしても才能がないと到達出来な世界を構築しているな~というのが正直な感想。

ただ「凄い!」と感じました。読まれた方も多いのでしょうが、文庫本600ページ以上の本なのに全く短いと感じる読者は恐らく多かったのではないでしょうか。

この方の他の本、やはり読んでみるべきだと素直に思ったのでした。

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