2023年5月4日木曜日

西村賢太揃い踏み

本屋でなかなか揃えられなかった西村賢太の作品群。

この連休を利用しない手はない!と思いつつ少しスタートダッシュが遅れましたが、先ずはアマゾンもフルに活用して取り敢えず13冊揃いました。苦役列車が手始めでしたが、その「わたくし」小説の描写のどぎつさに私は読んでいて思わず声を出さずに高笑いです。

どこまでもどこまでも脂ぎった青春の敗北感をその劣等感とかき混ぜるようにしてこれでもかと読み手に見せつけるその攻撃的な赤裸々感は読んでいても「これはちょっと女性の読者にはどう受けるんやろか?」と考えてしまうのです。

実際の所、書いてある中身は本当にコレでもかコレでもかというくらいの連戦連敗の青春記。しかし、その内容はチャレンジや成長などというような明るい未来を予期させるような記述は何処にも無いという若くして既に未来の無い敗戦記のようなド暗さがあります。しかし、その根底にあるのはマグマのような熱情だと思います。というか劣情と言ったほうが正しいのかも。

その男の劣情剥き出しの様子は普通の小説では決して表に出てこないドロドロの背脂。触ってはいけないデーモン・コアのような大変に危険な臭いがしてきますがそれは男性にとってはまた違うものであると感じます。そういう意味ではこれは読み手を選別する読み物だという気がしました。勿論男性でも西村氏の「私」小説を読もうという人間は絞られることと思います。

酒を呑もうにもアルコールをそもそも体が受け付けない人には「はな」(<西村風w)無理であるように、呑める人には味を峻別できるものなのかもしれません。無論、呑める呑めないに上下の別などありはしないのですが、呑めたほうが人生幅が広がるような気がしないでもありません。

今回も「苦役列車」収録2篇目の(落ちぶれて袖に涙の降りかかる)の最終段落で涙がポロッと落ちてしまいました。

残りの全てを読み終わってまたどんなもんだったか書こうかなと思いますが、その間にも残りを集め続けたいと考えています。

久々に出てきた読みたい小説の群れです。


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