2022年9月15日木曜日

人生の最後を心静かに苦しまず

長崎の義父も癌のターミナル・ケアでいろいろなリスクと闘っています。

私自身も様々な癌患者さんの最後を看取る事が多いのですが、痛みに顔を歪めていた癌患者さんが適切な疼痛コントロールを受けて穏やかに人生の最後の時を迎えられるようにする為には疼痛コントロールに対する経験や知識の集大成である先人達の残してくださったマニュアルが大変に役に立ちます。

痛みのコントロールには何段階も、何種類もの方法があるのですが、正直言ってペイン・コントロールには「痛いのならこれをやっておけば良い」的な機械的対応だけでは絶対に吸収しきれない深い溝の様なものがあって、患者さんと対話をしながらその日の調子に合わせて種々の副作用に対する対応や薬効の低下による使用薬剤のローテーションや投与量の変更を行っていかなければなりません。

ですからマニュアルはベースにあるのですが、そのマニュアルに書き切れないような「感情を持つ人間」だからこそ存在する微妙な部分を経験を積み知識を深めることで少しずつ上手くコントロール出来るようになる訳です。それでも絶妙なコントロールは「実に奥が深い」ものとなります。

無論、私のような一般内科医では「疼痛のコントロールが困難な症例」のように麻酔科の先生がその理論と技術を駆使して行われるような高度に洗練された組み立てを行うことは敵わないわけで、そのような時には素直に専門家の意見を拝聴して日常の診療に相談結果を戻します。

癌の場合、疼痛のみならず特に呼吸苦に対するオピオイドの効果の高さは人生のエンディングを迎えるにあたって塗炭の苦しみの中に沈んでいくのか、それともその苦しみを大幅に削減してお別れが出来るのか。

もし苦しさにもがいている身近の方がいたらきちんとそれをコントロールしてくれる医師が必ず近くに居られるはずですので、不安と疲労を抱え込まずに相談しましょう。きっと長崎の義父も今の先生のきちんとしたプロトコルのもと苦しさを遠ざけたエンディングを迎えられるものと信じています。

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