2021年7月10日土曜日

アルコール性肝硬変末期の患者さん達

タバコの吸いすぎも悲惨な最後を迎えますが、酒もまた然りです。

ところが、アルコール依存の人にはタバコの吸いすぎの人に比べて何かが違う心の仕組みがあると感じています。患者さん達が比較的コンスタントに入院してくるのが精神科なのですが、その何回目かの入院の果てに肝硬変で後戻りの出来ない所まで来て私の内科病棟にお世話になるというパターンも多いのです。

途中何回説明しても、家に帰ったその日から飲み始めるというのはごく普通で、代償性の肝硬変の方でも、何度も退院前に私から「一旦、この内科病棟を出た後は精神科に入院して依存症の教室で時間をかけて自分の病気と向き合ってから出たほうが良いですよ。」と言った所でほぼ全ての患者さん達は「大丈夫です。もう問題ないとおもいますから。」と言って退院していかれます。

そして、数ヶ月以内に腹を大きく腹水で膨らませて上に書いたような状態で「余命あと数ヶ月」と言う体になって戻ってくるパターンの何と多いことか。それだとおそらくマシな方で、家で亡くなった状態で見つかるようなことも一度や二度ではありません。

警察から連絡が入って「元」患者さんに関しての種々の説明をしなければならないことが多いのですが、勇ましい言葉とともに家に戻っていった患者さんの言葉や姿を思い出すと、私自身が大変にやるせない気持ちになります。

なんであの時無理してでも引き止めなかったのか?というのは自問としてはシンプルなんですが、自答することはとても出来ません。家へ戻ること自体は患者さんの基本的権利ですから、例え「おそらくこのまま帰宅しても死ぬ運命だろうな」と解っていても止められません。

酒の種類を問うことなく、-OH基がつくものなら朝から晩まで殆どマトモなものを何も食べずに水を飲むように酒を呑み続ける。こんな事がそう長く続くわけもありません。

なんとか止めさせる方法は無いのか?

正直なところ「無い」と思っている今日この頃です。家に帰って一人で我慢していても、そこには呑み友達がやって来たり、共依存と言ってその子の存在と一心同体になってしまっている老いた親などがこっそりとお酒を届けていたりするのです。

体の病気と言う以前に心の病気だと強く実感する非精神科医の自分でした。


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