2020年6月2日火曜日

小学生男子の忘れ得ぬ大興奮

今日、DIMEのニュース記事を読んでいたらメダカの記事が出ていました。

それによると、メダカの飼育というのは「仕事で様々な生物を飼育したプロは、メダカ趣味に回帰する」なんていう記者の個人的な感想が書いてあったのですが、竹島水族館の館長でさえ愛好家というくらいですからこれはもしかしたら本当なの「かも」知れません。

最近、と言っても既に3年ほど前からなのですが、外の訪問診療のバイトである施設に行くときに、決まって施設の人から提案を受けるのです。まあ、冷やかし半分なのですが。
それは施設でなんとなく飼っているメダカを「家に持って帰って家で飼いませんか」という提案。もう何十回も断っているのですが、私が患者さんの診察を終わってメダカの水槽をしげしげと覗き込むたびに同じセリフを私の頭から被せるように言ってくるのです。

季節季節で定期的に繁殖していくメダカ達。子供を増やしては何割かが消えていき、生き残った中で更にまた子供を増やす、と言う感じでチビ助たちが生まれる度に別の水槽の小さなエリア(実際にはメッシュの細かい網の中でのしばらくの間の別飼い)を作ることで施設のヘルパーさん達が安全に増やしていたのですが、その繁殖時期が来る度に私に「置いてけ置いてけ」ならぬ「持ってけ持ってけ」の呪文を浴びせくるのでした。

今のところ「我が家はもうこれ以上生き物はちょっと無理です」という一言で呪文を封じ込めておりますが、一体何時までこの呪文封じが通じますやら・・・。

さて、メダカに関しては小学三年生のときの非常に鮮烈な思い出があります。実は私自身は親父の仕事の関係で大学の農学部の隣りにある公務員宿舎というアパートに当時住んでおりました。(余談ですが、この前宮崎には叔母さんの亡くなる直前に帰った話をここにも書きましたが、そのときにもうそのアパートは取り壊されたと聞いてちょっと悲しくなりました。)

当時の農学部というのは近所の子供達にとっては昆虫取り放題、動物沢山、変わった標本がタダで展示されている素晴らしい遊園地でした。当時でさえボロボロの木造校舎だった農学部の周辺には小学校低学年の子供にとっては全く想像さえつかない使途不明の施設や謎の機器、秘密基地の代わりとなる使用されていない小屋などが広大な敷地内に散らばっており、まさに男の子の楽園状態。そこにはドロドロに藻が茂った(今思えば)防火水槽がありました。

ここの中にメダカや金魚が何故か泳いでいるのを知ってはいたのですが、ある日のこと何気なくそこを覗いていたところ何だか肌色のメダカらしきものが表面を泳いでいるのに気づいたのです。じーっと見てみても確かに形は100%メダカなのですが、色が肌色で何だか透き通るような感じ!

次の瞬間、声にならない声、それも大声を心のなかであげながら決意したのは「絶対このメダカに似た不思議な魚を捕る!そして学校のみんなに見せる!!」ということ。水槽の中のメダカが逃げるわけないのですが、目を離すと居なくなりそうな気がしつつも近くの自分の家まで可能な限りの全速力で走りいつもはクマゼミ取り用に使っていた長い長い柄の虫取り網をとってきました。

しかし、戻ってみるとやはりいません。それでも息を殺して水面をじーーーーーーーーっと見つめていると、居ました!あいつが。網の存在を知られないように後ろからアプローチしたり、横から掬ったりしながら格闘することほぼ数時間。もう早く帰って夕ご飯の食卓につかないと鬼のオヤジにぶん殴られるという頃になって採れました!採取成功です。

もう小学三年生の理科大好き少年の頭の中は「新種発見!」の大興奮で収集がつかない状態。w

多分もう顔は興奮と喜びでこれ以上ないくらいの顔になっていたと思うんですがそれを次の日学校に持っていったら「期待通り」教室は男子を中心に大興奮。みんなが水槽の中を代わる代わる見てはその発見の経緯を聞いてきました。

そこにやってきたのは当時理科の先生でクラス担任でもあった大倉先生。見た瞬間い「お、ヒメダカだね~!」と声を上げたのでした。私はその瞬間、先生も驚いてくれたと言う事実の嬉しさと同時に「新種じゃないんだ」という一人だけ心のなかで呟いた声とが渦を巻いたのを昨日のように覚えています。

しかし、あのときの興奮は医学部でて大学院出て、アメリカでいくつか自分なりの実験で見つけた不思議な事実の発見に夜中に一人で叫んだときの気持ちと全くおんなじだと言うことに20年後にも経験し再度体験したのです。

自分にとって新しいこと、新しいものを見つけ理解する経験の大切さはどんなに小さなことでもその人の人生を根本的に変えてしまうのかも知れません。そんなとき、もし私がその子の横に居たら最大限に一緒に興奮してあげたいと思うのです。

本当は何も解っていないのにモノを知ってしまったかのような大人が忘れてしまいがちな「知る興奮」を刻みつけることこそ子供を自分から前へ動かすガソリンになると固く信じている私です。


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