2022年4月25日月曜日

安全とコスト・他人事ではない

今回の知床半島で起きた観光船の遭難事故は未だ誰一人生存者が見つかっていません。

この時期の北海道北部の海は急上昇するこちらの気温とは異なり精々零度+1桁の温度。更に夜になればそれ以下になるでしょうから、例え救命胴衣を着けていてもアッと言う間に体温が奪われていくのは間違いなく、水面上に顔が浮いていて呼吸が出来ていたとしても体温が低下した状況では筋肉を動かすことは全く出来ません。目の前に陸があることを確認できたとしても、救命胴衣を着用しての遠泳など絶対に無理だと考えます。

体力というのは普通、気力が充実していればこそ維持できるもの。以前、野口さんがエベレストの登山者が寒さと低酸素にやられて眼の前で自分でアンカーを外して崖から飛び降りる話をある番組で話しているのを視て、体力と気力というのは表裏一体だということを改めて痛感しました。その意味で見つかっていない方々の事を考えると暗澹たる気持ちになります。

それにしても、運航会社「知床遊覧船」というのはいろいろな情報を知ればるほど出鱈目だなって感じます。6年前に取締役が交代、最近2年は頻繁に人が入れ替わり更に21年には3月までに人員整理方針に意見が合わなかったスタッフ5人が退職しているとの報道。

それ以降もこの運行会社の船が岸に近づきすぎたり、定置網の近くを通ったりする様子が目撃され、操船技術が未熟と周りのベテラン操縦士に指摘されています。 そのあと昨年中にKAZU Iは操船技術の未熟さによると見られる漂流物との衝突や座礁を起こしたりしていて、報道番組の中では「いつか大変な事にならなければいいけどと思っていた」と語る別の船の男性船長の言葉が重く響きました。

実際、今回の沈没事故で行方不明となっている船長は上記の座礁事故の際にも同船に乗務しており、業務上過失往来危険容疑で書類送検されていたとの事で、懲りないとうのはこのことかと言う感じです。

更に、今回の事故当日は周囲の他の船長から「出航はするなよな」と念を押されてそれに肯定的な返事をしていたといいます。では何故出たのかという謎も残ります。

そもそも事務所では事務所側の無線アンテナが事故前から折れてい無線を受信できない状態だったとのこと。会社側も国土交通省などの調査に対して事故発生時に連絡手段が無く、詳しい状況は把握できなかったという趣旨の説明をしているとか。また、少なくともGPSに当たる装置が「点検で外されていた状態(→そもそも付いていたのか?)」だったとの話まで出る始末。もう滅茶苦茶です。

安全に関わる仕事をしている会社が安全に対する投資を行えなくなった時点で、本質的には「退場処分」を受けるべきで、ギリギリの運営費で金を稼ごうというのは本末転倒。安全・安全・安全が全てだと思います。結局、こうやって大きな事故を起こした会社が長い間その汚名を濯ぐことは出来ないばかりか多くの中小の会社は潰れていきます。

今回の大事故。安全軽視ここに極まれリという感じですが、人の命を乗せて運ぶ運送業というのは本当に一回事故を起こせば大量の人命が失われることが本当に普通で、日航ジャンボ機墜落事故福知山線脱線事故など、大量輸送業務に係わる仕事はいかに重大な責務を負っているかをこのような大事件が発生する度に改めて思い知らされるのは堪らないです。

同じことは車でも同じ。私が移動手段として常に「素晴らしい」と感じるバイクの使用を止めたのは少なくとも名古屋では危なすぎるから。そして車に乗らないときは普通は歩いて移動し、車自体もスタイルで決めず「家族を乗せて安全に移動できる」ということを最重要の項目として選びました。もちろん、軽自動車は最初から完全に除外。ジウジアーロも絶賛する「コンセプト」は素晴らしい日本の軽自動車ではあっても、やはり安全の度合いは通常そのサイズと構造への拘りに比例し、結局のところ安全にはお金をかけるしか無いという結論です。

移動というのは常に「臆病」が最も正解だと思います。

安全の軽視が産んだ今回の大事故。26人の人々の過去と輝かしい未来は金や謝罪では決して戻ってきません。


0 件のコメント: